10分でわかるキャッシュフロー計算書の見方と分析方法 公開日:2021年12月6日

キャッシュフロー計算書は、会社の資金繰りがうまくいっているのか危ないのかを判断するために非常に重要な財務諸表です。しかし、キャッシュフロー計算書が浸透しておらず、よくわからない方が多いのが現状です。そこで、この記事ではキャッシュフロー計算書の見方と分析方法を一緒に見ていきます。

キャッシュフロー計算書とは?

一般的に黒字経営を行っている会社は、会社の経営が健全であると考えられています。しかし、「黒字倒産」や「勘定あって銭足らず」といった言葉に代表されるとおり、黒字であっても資金がショート(不足)すると会社は倒産してしまいます。
そのため、会社経営においては、売上高や営業利益を管理するのと同じようにキャッシュフローの状況も管理することが重要です。
しかし、企業の決算発表をみても売上高・営業利益・経常利益について報道されることがあってもキャッシュフロー計算書について取り上げられることは多くありません。また、上場企業はキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられていますが、非上場企業は作成が必須ではなくキャッシュフロー計算書を作成している会社は多くありません。それによりキャッシュフロー計算書が一般にはあまり浸透していないのが実情です。

まず、キャッシュフロー計算書でいうキャッシュは日本語では「資金」と翻訳されます。そしてこの資金には会社が保有している現金のほかに、いつでも引出しが可能な「当座預金」「普通預金」、預入れ期間が原則として3ヵ月未満の「定期預金」などが含まれます。また少し専門的になりますが、コマーシャルペーパーのように換金性が高く、価格変動があまりない金融商品についてもキャッシュフロー計算書の資金の範囲に含まれます。この現金や預金などの資金が1年間でどれだけ増加または減少したかを「営業活動」「投資活動」「財務活動」という3つの区分に分類して表示したものがキャッシュフロー計算書なのです。
なお、キャッシュフロー計算書の表示方式は直接法と間接法の2種類があるため、この分類については「キャッシュフローの種類(直接法、間接法)」の項目で詳しく解説します。

キャッシュフロー計算書の目的

会社経営でよく使われている売上高や営業利益などの損益だけでは、会社の資金繰りの状況は分かりません。そのため、資金繰りが行き詰まらないようにするためにキャッシュフロー計算書を作成して、本業である営業活動での収支、設備投資の状況を表す投資活動での収支、借入などの資金調達の状況を表す財務活動の収支に区分して、より細かく資金の流れを把握することが必要となります。

キャッシュフロー計算書のメリット

多くの会社が作成している損益計算書では会社の損益の状況を確認できますが、資金繰りの状況を確認することはできません。そのため、資金繰りが不安定な中小企業こそ資金ショート(不足)を防ぐためにキャッシュフロー計算書を作成することが大切です。また、銀行から融資を受ける場合や投資家から出資を受ける場合、貸借対照表や損益計算書に加えてキャッシュフロー計算書をもとに自社の状況を説明できるようになれば、自社の健全性をアピールしてより有利な条件で資金調達を行うことが可能となります。

キャッシュフロー計算書の読み方

ここからは、3つのキャッシュフロー計算書の読み方を説明します。

営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは本業での収支の状況を表しています。具体的には、以下の「営業活動によるキャッシュフローの例示」に記載しています。営業活動によるキャッシュフローは本業で資金を稼ぐことができているかを表す重要な指標です。もし営業活動によるキャッシュフローのマイナスが継続している場合は本業で資金を稼ぎ出すことができていない状態のため、どのような原因でマイナスとなっているかを確認することが必要です。

営業活動によるキャッシュフローの例示

  • 商品やサービスの販売による収入(+)
  • 商品やサービスの購入による支出(△)
  • 人件費の支払による支出(△)
  • 経費の支払による支出(△)

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは機械装置や建物などの設備投資や株式などの有価証券投資に関係する収支の状況を表しています。具体的には、以下の「投資活動によるキャッシュフローの例示」に記載した項目が投資活動によるキャッシュフローに含まれます。投資活動によるキャッシュフローは設備投資に関連するキャッシュフローのため、会社が成長ステージにあり積極的に設備投資を行っている場合はマイナスになる傾向があります。

投資活動によるキャッシュフローの例示

  • 建物や機械装置などの有形固定資産の取得による支出(△)
  • ソフトウェアなど無形固定資産の取得による支出(△)
  • 有形固定資産や無形固定資産の売却による収入(+)
  • 株式などの有価証券の取得による支出(△)
  • 有価証券の売却による収入(+)

財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは、借入や株式の発行による資金調達や借入金の返済のような財務活動に関係する収支の状況を表しています。具体的には、以下の「財務活動によるキャッシュフローの例示」に記載した項目が財務活動によるキャッシュフローに含まれます。財務活動によるキャッシュフローは会社の状況によって異なり、成長ステージにある場合は自己資金以上の投資を行うことが多いため、財務活動によるキャッシュフローはプラスになる傾向があります。一方で、会社が安定ステージにある場合は営業活動によるキャッシュフローで獲得した資金を借入金の返済に回すことが多いので、財務活動によるキャッシュフローはマイナスになる傾向があります。

財務活動によるキャッシュフローの例示

  • 借入による収入(+)
  • 借入金の返済による支出(△)
  • 株式の発行による収入(+)
  • 配当金の支払による支出(△)

キャッシュフローの種類(直接法、間接法)

営業活動によるキャッシュフローの表示方法には「直接法」「間接法」の2種類があります。

直接法によるキャッシュフロー計算書

営業活動によるキャッシュフローを直接法で表示した場合、商品の販売や仕入、給与や経費の支払などのキャッシュフローが主要な取引ごとに総額で表示されます。そのため、直接法によるキャッシュフロー計算書は会社のキャッシュフローの状況を理解しやすいと言われています。

間接法によるキャッシュフロー計算書

一方で、営業活動によるキャッシュフローを間接法で表示した場合、損益計算書の税金等調整前当期純利益に減価償却費のような「非資金損益項目」や投資有価証券売却益のような「投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目」などを加減算して表示されます。間接法によるキャッシュフロー計算書は、税金等調整前当期純利益を出発点として営業活動によるキャッシュフローを計算するため、損益計算書とキャッシュフロー計算書との関係が分かりやすいと言われています。また、損益計算書や貸借対照表の情報をもとに作成可能であるため間接法は作成の手間が少ないと言われています。そのため、キャッシュフロー計算書を開示している上場企業の多くが間接法で計算し、営業活動によるキャッシュフローを開示しています。

フリーキャッシュフローとは?

フリーキャッシュフローは、本業で稼いだ資金で、事業維持のために必要な設備投資をどれだけまかなっているかを表した指標です。「営業活動によるキャッシュフロー」から「投資活動によるキャッシュフロー」を差引いて算出します。
フリーキャッシュフローがプラスの状態は、会社経営の安定性が高く望ましい状態といえます。一方で、フリーキャッシュフローがマイナスの状態は、どのような原因でフリーキャッシュフローがマイナスとなっているかを確認することが必要となります。また、将来的なフリーキャッシュフローがプラスに転換する見込みについても確認しなければなりません。

キャッシュフロー計算書の分析方法

キャッシュフロー計算書は会社の資金繰りの状況を示した財務諸表です。企業がどのステージにいるかによって営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの3つのキャッシュフローのポジションが異なってきます。以下では、会社のステージ別に典型的なキャッシュフローの状況を解説していきたいと思います。

企業が安定ステージにあるケース(営業活動+、投資活動△、財務活動△の場合)

企業が安定ステージにある場合、本業でキャッシュフローを生み出すことができるので、営業活動によるキャッシュフローがプラスとなります。そして、安定ステージにある多くの会社では、本業で稼いだキャッシュフローを設備投資に回すので、投資活動によるキャッシュフローは、通常マイナスとなります。また、安定ステージにある会社で設備投資を行ってもまだ余裕がある場合は、借入金の返済を行ったり自己株式の取得を通じて株主還元を行ったりするので、財務活動によるキャッシュフローはマイナスとなる傾向があります。

企業が成長ステージにあるケース(営業活動+、投資活動△、財務活動+の場合)

企業が成長ステージにある場合、本業で稼いだキャッシュフローを上回る投資を行うため、不足分を借入などで資金調達をして投資を行います。そのため、投資活動によるキャッシュフローは大幅なマイナスとなる一方で、営業活動によるキャッシュフローに追加して資金調達することにより、財務活動によるキャッシュフローはプラスになる傾向があります。

企業が事業再構築ステージにあるケース(営業活動+、投資活動+、財務活動△の場合)

企業が事業再構築ステージにある場合、本業である営業活動によるキャッシュフローで稼いだキャッシュフロー以上に借入金の返済を行うことが必要となることがあり、土地や建物などの有形固定資産等を売却して資金を捻出することがあります。そのため、企業が事業再構築ステージにある場合は、財務活動によるキャッシュフローが借入金の返済により大幅なマイナスとなる一方で、営業活動によるキャッシュフローのプラスだけでは足りない分を投資活動によるキャッシュフローのプラスで補うことがあります。

財務三表の関係性

キャッシュフロー計算書に「貸借対照表」「損益計算書」を加えて財務三表といわれることがあります。キャッシュフロー計算書と貸借対照表の関係は、貸借対照表の現金・預金などについて、前期末と当期末の差額を「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つに区分したものがキャッシュフロー計算書となります。
また、キャッシュフロー計算書と損益計算書は、ともに資金の状況や損益の状況といった1年間のフローの情報を表した財務諸表という点で共通します。一方でキャッシュフロー計算書は1年間の「収支」を表した財務諸表であり、損益計算書は収支とは切り離された1年間の「損益」の状況を表した財務諸表という点で異なります。
多くの会社では、損益計算書で計算される税金等調整前当期純利益を出発点として、必要な項目を加減算することでキャッシュフロー計算書を作成しています。

まとめ

キャッシュフロー計算書は、企業の財政状態を示す「貸借対照表」、経営成績を示す「損益計算書」には表れない企業の資金繰りの状況を表す大切な財務諸表です。法令などでは上場企業を除いてキャッシュフロー計算書の作成が求められていませんが、すべての会社でキャッシュフロー計算書を作成することが望ましいでしょう。

執筆者プロフィール:
若原芳治(税理士)
若原会計事務所 事務所長、合同会社ワン・プロフェッショナルズ 業務執行社員、公認会計士・税理士。
2002年 有限責任監査法人トーマツ名古屋事務所に入所。約15年間にわたり金融機関を中心に延べ100社以上の様々なジョブに関与してきました。資金繰りに悩む経営者の助けになりたいと思い2019年に地元の愛知県で若原会計事務所を本格的に開業しました。また2020年から合同会社ワン・プロフェッショナルズに参画しています。実務経験を活かして、税務業務を中心に事業再生、事業承継、M&Aなど中小企業や個人事業主の最も身近な相談相手となるべく活動しています。

上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。

SHARE