スタートアップベンチャーのシード期を支えた、積極的な融資活用 売上の季節変動をdaytaでバランス調整 公開日:2022年1月26日

株式会社科学計算総合研究所
代表取締役
井原 遊
Ihara Yu

Profile

幼少期からコンピュータに親しみ、Webサーバや並列計算機システムの運用などのスキルを習得。北海道大学での研究を通してシミュレーションに興味を持ち、東京大学大学院でCAEの研究に従事する。CAEに関する研究のアセットを活用するために出場した「東京大学アントレプレナー道場」で最優秀賞を獲得したことがきっかけとなり、株式会社科学計算総合研究所を創業。

製造業の設計部署に向けて、独自技術に基づく高速シミュレーションサービスを提供する株式会社科学計算総合研究所は、創業者である井原遊氏が東大の研究室時代に得た着想をもとに現在の事業をスタートしました。創業以来積極的な融資を中心とした財務戦略で成長してきた株式会社科学計算総合研究所では、無担保・無保証で最大3,000万円までの融資が受けられる「事業性融資 dayta」をどのように活用していたのか、お話を伺いました。

株式会社科学計算総合研究所が提供するSaaS 型 CAE プラットフォーム「RICOS Production Suite」
ブラウザ上で簡単にシミュレーションなどの CAE 工程を実行できる。独自の機械学習アルゴリズムによる高速化機能なども追加予定。
WEBサイト:https://www.ricos.co.jp/ricos-production-suite/

Articles

Point1 東京大学アントレプレナー道場発、ものづくりのプロセスを最適化するスタートアップ

ーー御社の事業について教えてください

 自動車メーカーなど製造業の会社の設計部署向けに、独自技術を用いて高速にシミュレーション結果を予測できるサービスを提供しています。最もシミュレーション活用の進んでいる自動車メーカーでも設計の検討をするにあたり、限られた期間と予算の中でシミュレーションしますので、試すことのできる設計の範囲は限られてしまいます。その際に、弊社ではCAE(Computer Aided Engineering)にAIおよび高性能計算の技術を組み合わせた技術を活用することで、シミュレーション結果を高速かつ高精度に予測できます。

 元々、私が学生時代に在籍していた東京大学の研究室で、先のCAEシミュレーションの研究をしていて、オープンソースのソフトウェアを作っていたんです。シミュレーションのソフトは結構高くて、一本買うだけで数百万円から数千万円するのですが、それを安価で提供できたら何かしら事業化できる余地があるのではないかと思い、大学のアントレプレナー道場という授業に事業案を出したのがこの事業のきっかけです。

 創業後はPoC(Proof of Concept)の段階として、さまざまなお客様に課題を伺いつつ、私たちであればこういった解決策があります、という提案を何度も行い、実際に試してデータを出すことを繰り返しました。その中で製品化に繋がりそうなものを磨いていき今に至ります。2021年9月にはベンチャーキャピタルからの資金調達も行い、ちょうど事業フェーズが変わるタイミングです。

※ 概念実証。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指す。

Point2 株式調達時の時価総額を高めるため、積極的な融資で資金繰りを行う

ーー創業以来、銀行とはどのように関わってきたのでしょうか?

 経営の特性上、取引する銀行の数は多いと思います。メガバンクは紹介などで繋がり、各行口座を開設しました。融資への期待はもちろんですが、マッチングイベントなど営業的側面を見据えてという部分もあります。他にも、手数料が安く使いやすいネット専業銀行も複数行取引しています。給与振り込みや公的な引き落とし、納付書での払込など、用途で口座を分けて使っています。

 住信SBIネット銀行は昔から個人口座を使っていて、手数料の安さに加えて、24時間取引ができることや、UIが個人・法人で大きく変わらないなど、使い勝手が良いので利用しています。

ーー借入を積極的にされているということですね

 はい、私個人としては少しでも多く融資をいただきたいという気持ちでこれまで銀行と関係を作ってきました。株式での資金調達を行う段階での時価総額を高めるため、事業の検証期間は借入で資金繰りをしたいというのが背景です。様々な融資制度・サービスがあると思いますが、基本的には利息で圧迫されて苦しむというほどの金利コストではないので、先日のシリーズAの資金調達を行うまでは、借りられるところからはほとんど全て借りたと思います。

※ シード期など企業の初期段階において、ベンチャーキャピタル出資者の出資を受けることを指す。

Point3 daytaで顧客からの入金タイミングの季節変動のバランスをとることができた

ーー数ある融資を受けられた中で、「事業性融資dayta」を利用されたのはどういった状況だったのでしょうか?

 法人口座を利用している時に通知を見てdaytaを知りました。オファー型はあまりないのでなんだかおもしろいサービスだなと思いましたね。先ほどお話した通り、基本的に借りられるものは借りておこうというスタンスなので、そのまま借入を決めました。他の銀行さんの借入は長期のものが多く、「こんな計画を立てていて、こうやって返済します。」という説明をしなければいけないので、短期融資の使い勝手が違うなと思いましたね。

 我々の事業特性上、お客さまの予算が年度末に集中してしまうことが多いんです。結果的に4月・5月は資金が潤沢にあるのが徐々に減っていき、1月・2月は苦しいということが多々ありました。そのため、ドンピシャなタイミングでなくとも、こういった短期で借りられる融資サービスで資金のバランスを事前にとっておけるのはありがたいと思います。もちろん公的なコロナ融資などと比べると金利は高いですが、例えば500万円を借りるとして、その500万円を増やすのに必要な調達コスト(金利)に対して、その資本を投下したことのリターンの方が大きい、経営メリットがあると判断しているので、daytaで複数回借入を行っています。

 あとは、これは裏話ですが、資金調達に奔走していた時期に本当に色々な手段をやり尽くしたと思ったタイミングでdaytaのオファーが来て、個人資金の貸付をしようと思っていたのを防げたこともありました。先の通り入金タイミングの季節変動が大きかったので、daytaがあったことで今月の分は助かったなと思いましたね。

Point4 新プロダクトリリース、次のステージへ

ーー最後に、今後の展望について教えてください

 2021年の夏くらいまではベンチャーでいうシード的なイメージでやってきて、冬からちょうどステージが変わるタイミングです。2022年4月に新しいプロダクトのリリースを予定しているので、その導入や研究開発を一層進めていければと考えています。

 財務的な戦略としては、これまで大きく赤字を出してこなかったのですが、これからはいわゆるJカーブのように一度掘る時期がくるのかなと思います。どうしても事業計画的に銀行からの融資は受けづらくなると思うので、直近2、3年は株式での資金調達が主になってくるとは思いますが、つなぎ資金での利用などはこれからも続けていきたいと思います。

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