住宅ローン控除の借り換えを検討している方の中には、借り換え後も住宅ローン控除を受けられるか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、借り換えをしたとしても条件を満たせば住宅ローン控除は引き続き受けられます。ただし、適用されるためには注意したいポイントがいくつかあります。よく考えずに借り換え手続きを行ってしまうと、住宅ローン控除を受けられなくなったり、控除される期間が短くなったりしてしまう可能性があるため注意しましょう。
今回の記事では、借り換え後も継続して住宅ローン控除を受けるためのポイントや、住宅ローン控除額の計算方法、手続き方法などを詳しく解説します。そもそも、借り換えをすべきかどうか悩んでいるという方は、ぜひ下記のページも参考にしてみてください。
参考:住宅ローン借換えガイド
目次
借り換えしても住宅ローン控除を受けるための条件とは
住宅ローンを借り換え後も住宅ローン控除を受け続けるためには、いくつか条件があります。大きく分けると、以下の2点を満たさないと住宅ローン控除が受けられません。
- 新しい住宅ローンが現在の住宅ローンの返済のためのものであることが明らかであること
- 新しい住宅ローンが住宅ローン控除の対象となる要件に当てはまること
以下では、2つの条件について詳細を詳しく解説します。借り換え後に「住宅ローン控除が適用されなくなってしまった」と困らないように、あらかじめ確認しておきましょう。
今までの住宅ローン返済が目的であると証明できること
借り換え後も住宅ローン控除を受けるためには、借り換えの目的が今までの住宅ローン返済であることを証明する必要があります。
住宅ローンの借り換えの際は、今までのローンを繰上げ返済する必要があります。新しく借りたお金によって繰上げ返済を行ったことがわかるような書類を残しておくのが重要です。
借り換え後に登記簿への記載が終われば、借り換え前の銀行で設定されていた抵当権が抹消されて、借り換え後の銀行で改めて抵当権が設定されるため、登記が証明となるでしょう。
住宅ローン控除の適用要件を満たしていること
住宅ローン控除の適用要件は、原則として下記のとおりです。
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
- 返済期間が10年以上あること
- 住宅ローン控除を受ける年末時点で居住していること
- 住宅の新築等の日から6ヶ月以内に居住していること
- 床面積が50㎡以上あること(合計所得金額が、1000万円以下の場合は40㎡以上50㎡未満の住宅でも適用可能)
- 自宅で事業を営んでいる場合、床面積の50%以上が居住用であること
- 2つ以上の住宅を所有している場合は、主として居住している住宅であること
- 贈与および生計を一にしている親族等からの購入でないこと
借り換えの場合に特に注意したいのが「返済期間が10年以上あるか」です。借り換えのタイミングで返済期間を短く設定すると、借入当初からの返済期間が10年未満になった場合、控除を受けられなくなります。
返済期間を短くすると、その分総返済額の負担を軽減できますが、住宅ローン控除を受けられなくなると減税効果がなくなってしまいます。総返済額を減らすべきか、住宅ローン控除の適用を受けるべきか、どちらが得かはあらかじめシミュレーションを行って検討しましょう。
ちなみに、当初住宅ローンを組んだ時は控除の要件を満たしておらず、適用されなかった場合も、借り換え後に要件を満たせば控除を受けられます。
出典:国税庁 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
借り換え後の住宅ローン控除額の計算方法
借り換え後の住宅ローン控除額については、「借り換え直前より大きい金額で借りた場合」と「借り換え直前と同じ金額もしくは少ない金額で借り換えた場合」のどちらかによって計算方法が変わります。
ここでは、上記の2つのパターン別の計算方法や、借り換え時の注意点を解説します
借り換え直前より大きい金額で借り換えた場合
借り換えにかかる諸費用の分なども含めて借り換えを行う場合、借り換え後の住宅ローン金額は借り換え直前よりも大きくなります。
この場合、住宅ローン控除の対象となるのは、「(借り換えによる新たな住宅ローン等の年末残高)×(借り換え直前における当初の住宅ローン等の残高)/(借り換えによる新たな住宅ローン等の借入金額(当初金額))」です。
わかりやすく、下記のケースを例にシミュレーションしてみましょう。
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【例】
- 借り換え前の住宅ローンの残高:2,000万円(A)
- 借り換えによる新たな住宅ローンの借入金額(当初金額):2,200万円(B)
- 借り換え後の住宅ローンの年末残高:2,100万円(C)
このケースでの住宅ローン控除の対象額は、「控除対象額=C×A/B=2,100万円×2,000万円/2,200万円=約1,909万円」と計算できます。
つまり、借り換えのタイミングで借入額を増やしたとしても、住宅ローン減税の対象となる金額が増えるわけではない点に注意しましょう。
借り換え直前と同じ金額もしくは少ない金額で借り換えた場合
借り換え直前と同じもしくは少ない金額で借り換えた場合、住宅ローン控除の対象となるのは新たな住宅ローンの年末残高です。
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【例】
- 借り換え前の住宅ローンの残高:2,000万円(A)
- 借り換えによる新たな住宅ローンの借入金額(当初金額):1,800万円(B)
- 借り換え後の住宅ローンの年末残高:1,700万円(C)
上記のケースでは、「控除対象額=C(借り換え後の住宅ローンの年末残高)=1,700万円」です。
つまり、それまでの住宅ローン控除額を計算する場合と変わらず、年末の借入残高に対して一定額が控除されます。
なお、実際にどのくらいの減税効果があるかは、入居した年によって変わります。最初に住宅ローンを借りたときに適用された控除率は借り換え後も変わらないため、元の控除率・控除期間に従って減税額を計算します。
例えば、2023年に新築の住宅を建てた方の場合、控除率は0.7%で計算され、最大控除期間は13年です。上記のケースにおいては、借り換え後の年末残高1,700万円に対して0.7%をかけた11.9万円が税金から控除されます。
ただし、認定長期優良住宅や特定エネルギー消費性能向上住宅など、住宅の区分によって各年の控除額に限度額が設定されているため、あらかじめ確認しておきましょう。
控除額計算のほかに抑えておきたいポイント
住宅ローンの借り換えをする場合、住宅ローン控除の金額以外にも注意したいポイントがいくつかあります。
最初のポイントとして、借り換えを行っても当初の控除期間は延長されないことが挙げられます。住宅ローンの借り換えをしたとしても、控除期間は住宅ローン控除を受け始めてから一定期間のみとなっています。例えば、借り換え前の残りの控除期間が5年だった場合、借り換えした後も控除期間は5年のままです。
次に、返済期間を短くすると、住宅ローン控除が受けられなくなるケースがある点に注意しましょう。住宅ローンの借り換えの際に、残りの返済期間を短くする繰上げ返済を行った場合、住宅ローンの借入当初からの返済期間が10年を下回ってしまうと控除は受けられません。繰上げ返済をして利息負担を軽減した方が良いのか、住宅ローン控除を受けた方が良いのか、両方の支払い金額をシミュレーションした上でお得な方を選びましょう。
最後に、住宅ローンの借り換えを検討する場合は、単純な金利の差だけでなく諸費用や総返済金額なども考慮することが重要です。適用金利が安くなったとしても、返済期間や残りのローン金額によっては、利息の軽減効果がそれほど期待できないケースもあります。借り換えシミュレーションを行った上で、毎月の返済額やトータルの返済額がどのくらい変わるかを事前に試算しておきましょう。
住宅ローンの借り換えの際に注意したいポイントについては、以下の記事でも解説していますので、合わせてご覧ください。
参考:住宅ローン借り換えの注意点とは。よくある失敗や注意点をご紹介。
住宅ローン控除を受けるための手続き
借り換え後も住宅ローン控除を受けるための手続きについて解説します。基本的に、借り換え前と同じ手続きとなりますが、借り換え後の最新の書類を用意する必要がある点に注意しましょう。 借り換えを行う時期によって必要な手続きが異なるため、あらかじめチェックするのをおすすめします。
借り換え前から控除を受けており、10月以前に借り換えた場合
住宅ローンの借り換え後も住宅ローン控除を受ける場合、2種類の書類の準備が必要です。給与所得者の方は、年末調整のタイミングで勤務先に以下の2種類の書類を提出します。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金特別控除申告書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金特別控除申告書」は、現在の住宅ローンを契約して控除の申請を行った年に、税務署から送付される書類です。控除申告書には、住宅の取得価格や居住開始年月日などが記載されています。借り換え後もそのまま使える書類なので、保有している書類をそのまま勤務先に提出しましょう。
万が一紛失してしまった場合は、税務署に再発行を依頼すれば新しいものが手に入ります。年末調整の手続きに間に合うように、早めに手続きを行っておきましょう。
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」は、毎年9月末日を基準として、借入先の金融機関が発行する書類です。繰上げ返済や延滞などがないことを前提として、年末時点での借入残高が記載されています。毎年10月〜11月に金融機関から送付されてくるため、毎年最新のものを年末調整で提出する必要があります。
借り換え前から控除を受けており、10月以降に借り換えた場合
10月以降に借り換えをした場合、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」の発行が間に合わないケースがあります。その場合は、年末調整ではなく確定申告によって住宅ローン控除の手続きを行いましょう。
必要な書類は、年末調整と同じく「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」の2種類です。
借り換えを行った翌年の2月16日〜3月15日の間に、忘れずに確定申告を行いましょう。
借り換え前は控除を受けておらず、借り換え後から控除適用される場合
借り換え後に初めて住宅ローン控除を受ける場合は、会社員などの給与所得者でも、確定申告を行って手続きする必要があります。 確定申告の際に必要な書類の例は下記のとおりです。
- 確定申告書
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 登記事項証明書
- 工事請負契約書または売買契約書の写しなど取得金額がわかる書類
- (土地の購入についても住宅ローン控除を受ける場合)土地の登記事項証明書および売買契約書の写しなど
住宅区分によっては、上記の提出書類に加えて、区分に応じた書類の提出も必要なので、事前に必要書類を確認した上で、余裕を持って準備しておきましょう。 給与所得者の場合、2年目以降は、確定申告ではなく年末調整によって手続きを終えられます。上記で解説した必要書類を準備して、年末調整の際に勤務先に提出しましょう。
出典:国税庁 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
まとめ
住宅ローン控除は、税負担軽減という点で大きなメリットがある制度です。住宅ローンの借り換えを行っても、条件を満たせば引き続き適用されます。
手続きは借り換え前と基本的に同じですが、必要書類は最新のものを用意する必要がある点に注意しましょう。借り換えのタイミングによっては、年末調整に書類が間に合わないため、自分で確定申告の手続きを行わないといけません。
また、借り換えと同時に返済期間を短くする場合、住宅ローン控除が適用されなくなってしまうケースがあります。繰上げ返済によって総返済額を小さくする方が良いか、住宅ローン控除によって支払う税負担を軽減する方が良いか、あらかじめ比較しておくのをおすすめします。
加えて、住宅ローンの借り換えの際は、金利の差だけでなく諸費用などもしっかりと確認しましょう。返済期間やローン残高によっては、借り換えのメリットがあまり感じられない場合もあります。
不安な方は、借り換えシミュレーションを活用して、どのくらい借り換えの効果があるか確認してみましょう。