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会社設立時に活用できる助成金・補助金ガイド:種類・申請方法・注意点
- 公開日:2025年6月 3日

会社設立時の資金調達は、経営者にとって大きな課題です。自己資金だけでは十分な資金を確保できず、事業の実現に不安を感じるかたもいらっしゃるでしょう。そこで、この記事では、会社設立時に活用できる助成金・補助金について詳しく解説します。種類や申請方法、注意点を押さえることで、創業時の資金調達の選択肢が広がり、経営基盤の構築に役立てることができます。
目次
助成金・補助金とは
助成金と補助金は、企業の成長や事業展開を支援する重要な資金源です。両者とも国や地方自治体が提供する返済不要の資金ですが、その性質には違いがあります。これらの特徴を理解し、自社の状況に合わせて適切な制度を選択することが重要です。
助成金は主に雇用や労働環境の改善を目的とし、要件を満たせば比較的受給しやすい特徴があります。一方、補助金は新規事業支援や地域振興を目的とし、競争率が高く審査が厳しい傾向にあります。また、助成金は通年で申請可能なケースが多いのに対し、補助金は期間限定の公募が一般的です。両者とも返済不要ですが、申請時には事前の資金確保や綿密な計画が求められます。
会社設立時に活用できる主な助成金
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金制度は、企業の従業員教育を国が支援する仕組みで、経費の最大100%が助成されます。中小企業の新入社員研修にも適用可能で、幅広い業種・規模の企業が利用でき、事前に計画を提出し要件を満たすと申請が可能です。社員のスキルアップや能力開発を重視する企業にとって、有効な制度といえるでしょう。
《活用例》
・IT企業がプログラミング研修を行う場合の研修費
・製造業の企業がサブスクリプション型の研修サービスを利用する場合のサービス利用料
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は中小企業の人材確保・定着を支援する制度で、対象は従業員の処遇改善や職場環境整備です。雇用管理制度助成コース、中小企業団体助成コース等さまざまなコースがあるため各社の状況に合わせた助成金を選択することができます。
《活用例》
・社員の段階に応じた階層別の教育・研修制度を導入することによって事業所の離職率を低下させた場合の研修費
・従業員のモチベーションを上げて事業所の生産性を向上させるために、標準評価の際に2%賃金アップする人事評価制度を整備した場合の経費
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員転換、処遇改善の取り組みを実施した事業主を支援する制度です。正社員化や賃金引上げなどの取り組みが対象となります。中小企業向けの助成額が手厚く設定されており、企業規模に応じて支給額が変わります。
《活用例》
・飲食店がアルバイトを正社員に登用した場合
・製造業で有期契約社員の賃金を3%以上引き上げた場合
(参考:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html)
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を一定期間試行的に雇用する企業を支援する制度です。 対象者や助成額は条件により異なりますが、最長3ヶ月間、月額最大4万円(※)の助成が可能です。この制度を活用することで、企業は人材の適性を見極める機会を得られ、求職者は就業経験を積むことができます。
※対象労働者が母子家庭の母等もしくは父子家庭の父の場合は、いずれも1人あたり月額最大5万円となります。
《活用例》
・妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている求職者を3ヶ月間トライアル雇用した場合
会社設立時に活用できる主な補助金
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓等を支援する制度です。申請には経営計画と補助事業計画の作成が必要です。商工会議所等の支援機関に相談しながら準備することをおすすめします。この制度を活用することで、自社の経営力強化と売上アップを狙うことができます。
《活用例》
・飲食店がテイクアウト用メニューを開発し、チラシを作成・配布する取り組みをした場合の製作費
・食品業者が販路開拓等を行うため展示会に参加した場合の旅費
(参考:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金 https://r3.jizokukahojokin.info/)
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者の革新的な製品開発や生産プロセス改善を支援する制度です。この制度を活用することで、企業の競争力向上や生産性向上につながります。
《活用例》
・自動車部品メーカーが新素材を用いた軽量部品の開発しそのプロセスに必要な機械購入費
・食品加工業者が生産ラインの自動化をした場合の機械購入費
(参考:ものづくり補助金総合サイト https://portal.monodukuri-hojo.jp/)
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者のデジタル化(クラウド会計ソフトの導入や、顧客管理システムの構築など)を支援する制度です。業務効率化や生産性向上のためのITツール導入費用の一部を補助します。この制度を活用することで、企業は比較的低コストでITツールを導入し、業務改善を図ることができます。
《活用例》
・飲食店がPOSレジシステムを導入する場合の導入費
・製造業が在庫管理システムを導入する場合の設備費
(参考:IT導入補助金 https://it-shien.smrj.go.jp/)
事業承継・M&A補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の円滑な事業継続を支援する制度です。後継者不在や経営者の高齢化に悩む企業に対し、事業承継や事業引継ぎの準備から実行までの費用を補助します。 この制度を活用することで、円滑な事業承継を行うことができます。
《活用例》
・事業承継した旅館の改修工事費
・事業承継を契機に、受注が拡大している製品の生産プロセスを改善するための設備費
(参考:事業承継・M&A補助金事務局 https://jsh.go.jp/)
助成金・補助金の申請方法
申請の準備と必要書類
助成金や補助金の申請には、適切な準備と必要書類の整備が不可欠です。まず、自身の行っている事業と申請する制度の目的が合致していることを確認しましょう。次に、法人登記簿謄本、定款、決算書類、納税証明書などの基本的な書類を用意します。さらに、制度ごとに求められる特殊な書類にも注意が必要です。申請前に専門家のアドバイスを受けることで、より確実な申請が可能になります。
申請・入金の手順
助成金・補助金の申請手順は、制度によって異なりますが、一般的な流れは以下の通りです
1. 情報収集
申請する制度の詳細、要件、締切日などを確認します。
2. 申請者情報の登録
オンライン申請の場合は専用ウェブサイトで、書面申請の場合は所定の用紙に申請者情報を記入します。
3. 必要書類の準備
事業計画書、収支計画書など、必要な書類を用意します。
4. 申請書の作成
必要事項を漏れなく記入し、準備した書類を添付します。
5. 内容確認
記入漏れや誤りがないかを確認します。
6. 申請の提出
オンラインの場合は電子署名を行い送信、書面の場合は指定の提出先に郵送または持参します。
オンライン申請の場合、24時間申請可能で進捗確認も容易ですが、システムエラーに備えて余裕を持った申請が重要です。書面申請の場合は、提出期限や必要書類の不備に特に注意が必要です。いずれの方法でも、申請要件を十分に理解し、正確かつ丁寧な申請書作成を心がけることが採択への近道となります。
申請時の注意点とよくある間違い
助成金・補助金の申請時には、細心の注意を払う必要があります。よくある間違いとして、申請書類の記入漏れや添付資料の不備が挙げられます。また、申請期限の見落としや、事業計画との整合性確認も注意が必要です。審査基準を十分に理解し、自社の強みを明確に示すことが重要です。さらに、予算の使途や成果指標の設定にも留意が必要です。
助成金・補助金を効果的に活用するコツ
事業計画との整合性
助成金や補助金の申請には、事業計画との整合性が不可欠です。審査では、申請内容が事業計画に沿っているかが重視されます。補助金の目的と自社の事業目標が合致していることを明確に示し、具体的な数値目標や実施スケジュールを盛り込むことが重要です。また、補助金を活用することで、どのように事業を成長させ、地域経済や雇用に貢献するかを具体的に説明することで、採択の可能性が高まります。
複数の助成金・補助金の組合せ方
会社設立時には複数の助成金・補助金を組合わせて活用することで、より大きな支援を受けられる可能性があります。ただし、各制度の要件や併用可能性を慎重に確認する必要があります。例えば、国の創業補助金と地方自治体の支援制度を組合わせたり、設備投資向けの補助金と雇用関連の助成金を併用したりするなど、戦略的なアプローチが効果的です。専門家のアドバイスを受けながら、自社の事業計画に最適な組み合わせを検討しましょう。
申請後のフォローアップと報告義務
助成金や補助金の申請が承認された後も、受給者には一定の責任が伴います。定期的な報告書の提出や、資金の使途に関する詳細な記録の保管が求められることがあります。これらのフォローアップ作業は、支援金の適切な利用を証明し、将来の監査に備えるために重要です。適切な報告義務の遂行は、企業の信頼性向上にもつながる重要な取り組みといえるでしょう。
助成金・補助金利用時の注意点
返還リスクと対策
助成金や補助金は不適切な使用や目標未達成により、受給した資金の返還を求められる場合があります。このリスクを軽減するには、申請時の事業計画を慎重に策定し、資金の使途を明確に記録することが重要です。また、定期的な進捗確認と、必要に応じて計画の修正を行うことで、目標達成の確実性を高めることができます。
税務上の取扱い
助成金や補助金を受け取った際の税務処理は、適切に行う必要があります。一般的に、これらの資金は益金として計上され、法人税の課税対象となります。ただし、固定資産の取得に充てた場合は、圧縮記帳による課税の繰り延べが可能です。また、補助金の種類によっては非課税扱いとなるものもあるため、税理士や公認会計士に相談し、正確な処理を行うことが重要です。
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※本記事に記載した内容は、2025年4月時点の情報です。最新の情報については、各制度のWEBサイトなどをご確認ください。