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会社登記とは? 商業登記と法人登記の違いは?手順、必要な書類、申請方法、よくある失敗を解説
- 公開日:2021年12月 6日

会社などを設立するには会社登記が必要です。会社登記をして、はじめて会社を名乗ることができ、会社として活動できます。本記事では、会社の設立に必要な登記の手続き、登記前と登記後にやるべきこと、よくある失敗例など、株式会社の会社登記を想定して解説します。
会社登記とは?
会社登記とは、正式には商業登記といい、会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)について、その名称や所在地、目的、役員の氏名などを公示する制度です。会社の登記は商業登記、会社以外の法人(一般社団法人・一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人など)の登記は法人登記と言います。
会社を設立する際には以上のような会社登記が必要です。登記されていなければ会社が存在していると主張できず、会社として活動をすることもできません。
会社登記までの流れ
会社登記をおこなうまでの流れは次のとおりです。

1.会社概要を決める
最初に、設立する会社の概要を決定します。決めなければならないのは、以下のような事項です。
- 商号
- 本店所在地
- 法人の設立形態(会社なら、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)
- 株式会社の設立方法(発起設立、募集設立)
- 事業目的
- 資本金
- 事業年度 など
2.印鑑の作成
商号や法人の種類を確定したら、会社の印鑑を作成しましょう。定款作成・認証の時点では不要ですが、会社登記の時点では必要なものです。納品まで時間がかかることもあるため、早めに発注することをおすすめします。
百貨店や街中の印鑑専門店など店舗で作ってもらうことが多いですが、最近は通販を利用する人も増えてきました。
会社が用いる印鑑は、主に「代表者印(会社実印)」、「銀行印」、「角印(社印)」の3点です。代表者印(会社実印)は必ず用意する必要があり、会社登記時や契約締結時に使用します。銀行印は銀行口座の開設に使用し、角印は請求書や領収書に使用するのが一般的です。
ほかに、会社名、住所、電話番号などが入った、便利な「住所印(ゴム印)」を作成しておくとよいでしょう。
3.定款作成・認証
会社の概要が決まったら、定款を作成します。株式会社や一般社団法人など、所有と経営が分離可能な法人は、作成した定款について公証人の認証を受けなければなりません。
定款の作成
定款に記載する事項には3種類あります。必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」、一定の定めを設ける場合には記載が必要な「相対的記載事項」、会社が自主的に記載する「任意的記載事項」です。
詳細はこちらを確認してください。
定款の認証
定款の認証とは、作成した定款が正当なものであることを、公証人に証明してもらう手続きです。本社所在地を管轄する公証役場でおこないます。
まずは、管轄公証役場に連絡をして作成した定款のチェックを依頼しましょう。修正が必要な箇所があれば修正し、問題がない状態になれば定款認証の予約をします。
定款認証は、発起人全員で公証役場にいくのが原則です。ただし、全員が揃わないときは、委任状によって発起人の1人を代理人にできます。
定款認証の費用
定款の認証にかかる費用は以下のとおりです。
- 公証人に払う手数料(1件につき5万円)
- 謄本の請求手数料(1ページ250円、4ページの定款を2部請求する場合で2,000円)
- 印紙代(4万円) ※ 電子定款は印紙代4万円がかかりません
4.資本金の払込み
資本金の払込み時期は、「定款作成日または発起人全員の同意があった日以降」です。定款認証後でも大丈夫ですが、会社登記までには払込みを完了している必要があります。
資本金の払込みに使用できる口座は、銀行、信用金庫、労働金庫、信託銀行などです。登記申請時には払込みがあったことを証する書面が必要なため、通帳がある口座か、オンラインで取引明細が確認できる口座が良いでしょう。
また、資本金の払込みには発起人や設立時取締役の口座を使用します。新しく開設せず、現在使っている口座を使用しても構いません。発起人が複数いる場合は、一般的に発起人代表の口座を使用します。
入金方法は、出資者が発起人1名であれば預入でも問題ありません。ただし、複数の場合は、振込による必要があります。預入だと誰が入金したか確認できないためです。
5.会社登記の申請
印鑑作成、定款作成・認証、資本金の払込みが終わったら、会社登記申請をします。
会社登記をするときは、設立登記申請書や定款などの必要書類を揃えて、本店所在地を管轄する法務局への申請が必要です。印鑑届書も同時に提出します。
登記の完了時期は、申請からおおむね1~2週間です。登記が完了すると、会社の「登記事項証明書(登記簿謄本)」や「印鑑登録証明書」を取得できるようになります。
会社登記の必要書類
それでは、会社登記の必要書類について具体的に説明します(設立する法人の種類で必要書類が異なります)。
株式会社を発起設立する場合、次のような書類が必要です。
- 株式会社設立登記申請書
- 収入印紙貼付台紙
- 登記すべき事項(CD-R、オンライン提出、A4用紙のいずれかにより提出)
- 印鑑届書
- 添付書類(詳細は後述します)
設立登記申請書
設立登記申請書によって、会社登記を申請します。
申請書の様式は、法務局のWEBサイトからダウンロード可能です。株式会社の場合は、「株式会社設立登記申請書」を用います。設立方法や形態に応じた様式をダウンロードし活用してください。
【株式会社設立登記申請書(取締役会設置会社の発起設立)の様式】

引用:法務局|商業・法人登記の申請書様式
以下、設立登記申請書の記載事項について解説します。
商号
定款のとおり記載しますが、フリガナには株式会社など法人の種類は省略して記載します。
本店
都道府県から番地まで、ハイフンをもちいて省略せずに、○○番○○号のように正確に記載してください。
登記の事由
「令和○年○月○日発起設立の手続終了」(募集設立の場合は募集設立の手続終了)と記載します。
記載する日付は、次のうち遅いほうの日付です。
- 公証人によって定款が認証された日
- 資本金の払込みが完了した日(取締役がおこなう出資の履行調査が終了した日)
- (募集設立の場合)創立総会終結の日
登記すべき事項
会社登記の場合、登記すべき事項が多いため、A4用紙、CD-R、オンライン提出などにより別途作成・提出するのが一般的です。
A4用紙で提出する場合には「別紙のとおり」、CD-Rによる場合は「別添CD-Rのとおり」、オンラインはあらかじめ提出し、「オンラインにより提出済み」と記載します。詳細は後述します。
課税標準金額
課税標準金額には、資本金の額を記載します。
登録免許税
登録免許税は、次のうち高い金額を記載します。
- 資本金額の7/1,000(100円未満の端数は切り捨て)
- 15万円
上記の金額を、収入印紙または領収証書で納付し、収入印紙貼付台紙に貼付します。
添付書類
添付書類は、定款の内容、取締役会や監査役の有無、現物出資の有無などによって異なります。
収入印紙貼付台紙
登記免許税納付のため、収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼付します。収入印紙は右側に寄せて貼付し、消印しないようにしてください。
登記申請書と収入印紙貼付台紙をホチキスでとめて、ページの綴り目に法人実印(代表者印)で契印します。
登記すべき事項
登記すべき事項には、主に次のことを書きます。記載例は法務省のWEBサイトで確認できます。

登記すべき事項の提出方法は、A4用紙、CD-RやDVD-R、オンライン提出の3種類です。
CD-Rの場合は、登記すべき事項を記載したtxtファイルをCD-Rなどに保存して提出します。詳細については、法務省のWEBサイトを確認ください。ファイル名は「(任意の名称).txt」として、CD-Rには会社名を付して提出します。
オンライン提出の場合、送信で利用するのは「登記・供託オンライン申請システム」です。詳細は、法務省のWEBサイトをご確認ください。なお、オンライン提出は、書面での申請を基本に一部をオンラインで提出するもので、すべての申請がオンラインで完結する「オンライン申請」と異なります。
印鑑届書
設立登記申請書と一緒に、印鑑届書も提出しましょう。
【株式会社設立登記申請書(取締役会設置会社の発起設立)の印鑑届書様式】

引用:法務局|商業・法人登記の申請書様式
商号や本店の住所などは、定款や設立登記申請書とまったく同じように書いてください。資格の部分は代表取締役とし、左上の(注1の印)には法人実印(代表者印)、右下の(注3の印)には届出人の実印を押印します。
添付書類
必要となる添付書類は、取締役会の有無、監査役の有無、現物出資の有無で異なります。主に必要になるのは、以下のような書類です。

記載例は法務省のWEBサイトで確認できます。
原本の返還が必要な添付書類は、原本還付を請求できます(登記申請に使うためだけに作成する書類は除きます)。請求時は、還付を受ける書類のコピーを用意し、コピーのほうに「原本に相違ありません」と記載した上で、申請人の記名・押印をしてください。
以下、主な添付書類について、発起設立(取締役会なし・現物出資なし)の場合を想定して説明します。
払込証明書・通帳のコピー
払込証明書は、資本金がきちんと払込まれていることを証明するものです。現金での資本金の払込みがある場合は、払込証明書と通帳のコピーなどを添付書類として用意しましょう。
払込証明書は、設立時発行株式数と、払込みを受けた金額を記載し、設立時代表取締役がこれを証明します。
通帳のコピーは、「通帳の表紙」「表紙の次のページ」「入金が確認できるページ」の3枚が必要です。通帳がないネットバンクなどは、オンラインの取引明細などを印刷したものでも構いません(払込先金融機関名、口座名義人名、振込日および振込金額が記載されている必要があります)。
書類が揃ったら、払込証明書と通帳のコピーなどをホチキスでとめます。従来は払込証明書とすべてのページの綴り目に会社実印での契印が必要でしたが、令和3年1月29日民商第10号通達により、払込証明書への押印および契印は不要となりました。
払込証明書の例

設立時代表取締役の選定決議書
定款で設立時代表取締役を定めていない場合は、選定決議書が必要です。発起人の全員または過半数による選定か、設立時取締役の過半数の一致により選定をします。
押印する印鑑は、設立時代表取締役となる人は実印、ほかの取締役や発起人は実印または認印です。
また、発起人が設立時代表取締役に選定された場合で、選定決議書において被選定者がその場で承諾した旨の記載(下記例の下線部のような記載)がある場合は、選定決議書と就任承諾書を兼ねることができます。これは取締役・監査役の選任決議書においても同様です。
設立時代表取締役の選定決議書の例(発起人の中から互選する場合)

設立時取締役・監査役の選任決議書
定款で設立時取締役を定めていない場合、発起人の議決権の過半数をもって決定した取締役の選任決議書が必要です。また、監査役を設置する場合で定款に設立時監査役を定めていない場合は、監査役の選任決議書が必要となります。
押印は、令和3年1月29日民商第10号通達により不要になりました。ただし、選任決議書と就任承諾書を兼ねる場合には、設立時取締役の記名・押印が必要です。
監査役の設置については必須ではありません。監査役を設置しない場合には、監査役の選任決議書や就任承諾書は不要です。
設立時取締役選任決議書の例(監査役についても同様です)

設立時代表取締役・取締役・監査役の就任承諾書
就任承諾書は原則必要です。しかし、定款(電子定款は除く)に設立時代表取締役・取締役などの選任・選定の記載があって、なおかつ発起人が就任しているときは、就任承諾書を作成する必要はありません。作成しない場合、申請書の添付書類欄に「設立時取締役及び設立時代表取締役の就任承諾書は定款の記載を援用する」と記載してください。
また、選定決議書において被選定者がその場で承諾した旨の記載がある場合にも、就任承諾書の省略が可能です。省略する場合、申請書の添付書類欄には「就任承諾書は、設立時取締役及び設立時代表取締役の選任決議書の記載を援用する」などと記載します。
ただし、いずれの場合も、発起人以外から設立時代表取締役・取締役・監査役を選任した場合には、就任承諾書が必須です。
押印については、設立時代表取締役は実印を用います。設立時取締役は、取締役会非設置会社は実印ですが、取締役会設置会社は認印でも問題ありません。設立時監査役は認印が認められます。
就任承諾書の例(設立時取締役・監査役についても同様です)

※ 取締役・監査役の場合は選任
設立時代表取締役・取締役の印鑑証明書
印鑑証明書については、取締役会を設置する場合は不要(設立時代表取締役のみ必要)ですが、設置しない場合には設立時取締役全員分が必要です。
監査役については印鑑証明書の添付は必須ではありませんが、本人確認証明書が必要となります。
設立時監査役の本人確認証明書
監査役を設置する場合、設立時監査役の本人確認証明書として、次のいずれかの書類を提出します。
- 住民票の写し
- 戸籍の附票
- 印鑑証明書
- 運転免許証※
- マイナンバーカード(通知カードは不可)※
※ 運転免許証を用いる場合は両面、マイナンバーカードを用いる場合は表面のみコピーして、下の余白に次のような文言を記載します。
上記は原本と相違ありません。
令和○年○月○日
○○ 一郎
本店所在地決定書
定款に市区町村までの記載しかしていない場合は、本店所在地決定書を作成して、詳細な住所まで定める必要があります。押印は、令和3年1月29日民商第10号通達により不要になりました。
本店所在地決議書の例

会社登記の申請方法
会社登記の申請先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。
会社登記を申請する方法には、次の3つの方法があります。

会社登記申請書類の綴じ方・契印箇所
登記申請書類一式の綴じ方や押印箇所を確認しましょう。
まず、次の順番で各書類をホチキスで綴じます。
- 設立登記申請書
設立登記申請書が複数ページになるときは、ページの綴り目に契印します。 - 収入印紙貼付用台紙
設立登記申請書と収入印紙貼付用台紙との間に契印します。 - 添付書類
登記申請書・収入印紙貼付用台紙と添付書類との間に契印は不要です。
※ 原本還付請求をする場合、還付を請求する原本は綴じず、コピーを綴じてください。
印鑑届出書と登記すべき事項(A4用紙で提出する場合)については、ホチキスでとめず、クリップなどの取り外しができるもので書類に添付します。
会社登記後におこなうこと
会社登記が完了したら、登記事項証明書と印鑑証明書を取得しましょう。
年金事務所や銀行口座開設時の提出分は原本が必要ですが、税務署や市町村に提出するのはコピーで済む場合が多いです。印鑑証明書は銀行口座開設と創業融資の申込みをするとして2~3部あれば良いでしょう。
会社登記後におこなうことは次のとおりです。

法人登記でよくある5つの失敗
法人登記でよくある失敗例を紹介します。
会社の設立年月日がずれてしまう
会社の設立年月日は、会社登記申請の日です。郵送やオンライン申請の場合は、登記申請書類が法務局へ到着した日となります。例えば、4月1日を設立年月日としたいのに、3月30日に登記申請をおこなうと3月30日が設立日となりますので注意しましょう。
登記申請書・添付書類に記載されている氏名・住所が印鑑証明書と異なる
氏名や住所が公的な証明書と異なると修正の対象となります。特に住所については、番地にハイフンを用いて省略してしまう例が見られますので、印鑑証明書に記載されているとおり正しく表記しましょう。
登記すべき事項が定款と一致していない
登記すべき事項に記載する内容のうち定款に記載のあるものについては、定款に記載の内容と一言一句同じ文言にしましょう。内容自体は正しくても、定款の記載と少しでも異なる部分があると、修正をして再提出しなければなりません。
ただし、登記すべき事項に使用できない文字が含まれている場合(目的の段落記号に①、②、③を使っている場合など)は、使用できる文字(全角のアラビア数字の1、2、3など)に置き換える必要があります。
登記すべき事項に使用不可能な文字を使っている
登記すべき事項に用いる文字は、数字、ローマ字、記号もすべて全角です。数字を半角にしてしまうなどのミスがあると修正が必要ですので気をつけましょう。
ほかにも、使用する文字には次のようなルールがあります。
- 数字はアラビア数字と「万、億」を使う
- 「十、百、千、カンマ」は使用できない
- タブは使用できない
- 字下げや文字の区切りで空白が必要な場合は全角スペースを使う
※ ただし、商号や住所、氏名にスペースは使えません。
- 文字コードはシフトJISを使用する
- 文字フォントは「MSゴシック」か「MS明朝」にする
- ファイルはテキスト形式(.txt)にする
申請期限を過ぎてしまう
会社の会社登記は、登記事由の発生日から2週間以内におこなう必要があります。少々遅れたからといって却下されることはありませんが、あまりに遅いと罰則が適用される可能性があるので注意が必要です。
まとめ
会社登記にはやるべきことや注意すべきことが多いですが、作成する書類自体はそれほど難しいものはありません。法務局では予約制の登記相談も利用できますので、時間に余裕があるのなら、自力で登記申請をおこなうことも十分可能です。時間に余裕がない場合や、書類が複雑になり難しそうな場合などは、司法書士の活用を検討してみましょう。
執筆者プロフィール:
高橋 圭佑(行政書士・社会保険労務士)
ノータス経営労務事務所代表。1986年生まれ北海道旭川市出身。立命館大学法学部卒。社会保険労務士・行政書士として、会社設立、許認可申請、社会保険手続、就業規則作成、給与計算、人事労務・法務コンサルティングなど、主に中小企業の労務・法務の支援業務に携わっている。
上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。