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事業主貸とは?事業主借、仕訳の仕方も解説

  • 公開日:2021年12月 6日

最近は会計ソフトやクラウド会計の発達で、個人事業の方でも複式簿記を使った記帳で貸借対照表を作成し、55万円の青色申告特別控除(2020年度分より青色申告特別控除65万円が2段階になり、これまでの要件のみの場合には55万円控除に変更になりました)を受ける方が増えています。会計システムの進化で、ネットバンクから入出金情報を直接会計システムへ取込みをしたり、家計簿感覚で現金出納帳を入力したりしていくことで、複式簿記を意識することなく貸借対照表と損益計算書を完成することができるようになりました。ただ、個人事業の経理では、同じ通帳に経費と個人的な支出などの経費にならない支出や個人事業の売上等とは関係ない入金が混ざって出てくることが普通にあり、複式簿記を使って記帳する場合には、これらを分けて入力する必要があります。この経費にならない支出や売上ではない入金などを「事業主貸」や「事業主借」という勘定科目を使って記帳します。この記事ではこの2つの勘定科目について説明します。

「事業主貸」と「事業主借」とは

事業主貸(じぎょうぬしかし)と事業主借(じぎょうぬしかり)は、合わせて「事業主勘定」と呼ばれ、個人事業を複式簿記で記帳するときに使われる勘定科目です。

なぜ事業主貸が必要なのか?

簿記の勉強を始めると、大半の時間は資本金がある法人の複式簿記の勉強をします。個人事業の簿記を習う時間はそれほど長くはないと思います。そのため、検定試験に受かっていても、最初から事業主勘定や元入金の会計処理を問題なくこなせる人は多くありません。事業主勘定の処理は難しいものではありませんが、会社の会計処理とはかなり違うため、なかなか理解できないようです。
法人組織は出資者が出資をして、個人とは別人格の法人というものを作ります。この場合、社長も出資者も債権者などは法人とは他人となるため、お金の動きをきっちり帳簿に記帳し、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の作成が求められます。例えば社長が会社の預金から現金を引出した場合には、会社の経費を支払うための小口現金なのか、社長への貸付なのかをはっきりさせて、勘定科目は「小口現金」や「貸付金」を使って記帳し、貸借対照表へ残高を記載します。
これに対して個人事業の場合には出資者はいないため、貸借対照表を使って財務状況を説明することはありません。個人事業の債務は無限責任なので、融資を受けている金融機関は事業で出来上がる貸借対照表だけでなく、事業とは関係ない個人の資産情報も求めてきます。
税務上は、現金を引出してどう使っても、課税所得税の計算が間違いなくできて適正な申告と納税ができれば問題はありません。
以上の状況を踏まえ、貸借対照表上の個人的な入出金を解消する勘定科目として、事業主勘定というやや曖昧な勘定科目を使うことができることになっています。
個人の確定申告では、以前は貸借対照表を作成する必要性がなく、事業主勘定は所得税の税額に影響を及ぼすものではないので、それほど重要視されていませんでした。ただ、青色申告制度の重要度が高まり青色申告特別控除の55万円控除(2020年度分の申告より)の適用を受けるために、事業用の預金取引をもれなく記帳して、貸借対照表を作成することが要求されたため、事業主勘定を使った会計処理は必須になりました。事業主勘定を使って入力することで、普通預金の通帳残高と普通預金の元帳残高を合わせることができます。この仕訳をしなかった場合、元帳の残高は個人的な入金・支出の分だけ実際の普通預金残高と合わなくなってしまいます。

事業主貸は経費にはなるのか?

事業主貸は、経費にできない支出などがあった場合に使う勘定科目であるため、そもそも経費にすることはできません。事業で使っている普通預金から個人的な支払いのために現金を引出したり、所得税の納税をしたり、国民健康保険料の支払いをした場合に使います。
逆に経費になるものは、基本的には個人事業で売上を上げるために直接必要な支出です。販売のための仕入や外注費、そのための交通費、電話代などがこれにあたります。また、個人事業を運営していくために一般的にかかる支出も経費になります。家賃、オフィスの水道光熱費、人件費、通勤費、消耗品費などがあります。

個人の所得税・住民税などの税金の取扱い

個人の課税所得の計算上で経費にできる税金は決められています。経費にできる税金は主に「租税公課」という勘定科目を使い、経費にできない税金は「事業主貸」を使います。
所得をもとに計算される税金の中で個人事業税は経費にすることが認められています。その他では、事業運営上でかかる税金は経費にできるものが多く、事業のために使った収入印紙、事業用不動産等の固定資産税、不動産取得税、事業用自動車にかかる自動車税や環境性能割や自動車重量税などがそれにあたります。また、消費税の課税事業者で、会計処理を税込み処理で行っている場合の消費税の納税も租税公課として経費にすることができます。
所得をもとに計算される所得税や住民税は経費にすることができません。他にも課税されたときには事業とは直接関係ない相続税や贈与税、修正申告などを行ったときに課税される加算税や延滞税なども経費にすることができない税金です。国民健康保険料(税)や国民年金保険料、介護保険料の支払いは経費にすることはできないため事業主貸を使って会計処理をしますが、申告所得を計算する中で所得控除として全額を控除することができます。

家賃や水道光熱費は家事按分

代金の支払いをしたときに、経費にならない個人的な支払いを家事費といいます。
自宅と事務所が1つの建物になっている場合には、支払家賃を経費と家事費に分けて、経費処理をする必要があります。この按分を家事按分といいます。
支払家賃などの面積がはっきりわかる場合には、全体の面積のうちの事業で使用している面積の割合を計算して、全体の支払家賃のうちの事業使用面積相当額を「地代家賃」として経費計上し、残りの家事費相当金額は事業主貸で処理します。
水道光熱費は、事業として使用している割合を按分して、事業相当金額を経費とします。電気代は1日のうちの仕事で使用している時間数で按分するような計算が簡単です。水道代やガス代は、仕事で使用することがある場合にはその使用状況に応じた割合で経費とします。1つの電話で事業と個人的な使用の両方がある場合には、発信の明細をもらうなどして仕事で使用した時間で按分することも可能です。
自動車も両方の使用がある場合には、事業用で走った距離や時間数などで経費と家事費に按分します。按分する経費には自動車の減価償却費やガソリン代だけでなく、自動車保険料や自動車税、月極の駐車場代も含まれるので注意が必要です。

「事業主貸」を使う場合の仕訳例

事業主貸を使った仕訳例は以下のようなものがあります。

「事業主借」を使う場合の仕訳例

事業主借を使った仕訳は以下のとおりです。

個人的なお金から経費を支払った場合

確定申告における事業主勘定の処理

事業主貸と事業主借の2つの勘定科目は、青色申告決算書の4ページ目の貸借対照表の資産の部の一番下に事業主貸の12月末残高を記入し、負債・資本の部の下の方に事業主借の12月末残高を記入します。
ただ、どちらの勘定科目も期首は記入することができないようになっています。実は、12月末の残高を確定したあとに「事業主貸」「事業主借」「青色申告特別控除前の所得金額」を相殺して、元入金の残高と加減して翌年の期首の元入金残高のみでスタートします。4つを相殺することで元入金がマイナスになることがありますが問題はありません。
例えば、12月末の残高が次の場合の仕訳は以下のようになります。ただし、会計ソフトなどを使用している場合には次期繰越処理をすることで自動的にこれらの仕訳が行われるため、改めて入力する必要はありません。

  • 借方残高
    事業主貸 1,500,000円
  • 貸方残高
    事業主借 500,000円
  • 事業主貸の年末残高1,500,000円 事業主借の年末残高 500,000円 青色申告特別控除前の所得金額(※実際にはこの勘定科目は使いません) 3,500,000円
  • 元入金 1,000,000円

この仕訳を入れることで、元入金残高は期末の1,000,000円とこの仕訳の2,500,000円を足して、期首残高は下記の通りに3,500,000円でスタートします。

まとめ

会社の会計処理では、個人的なやり取りがあったときには、貸付金や仮払金、立替金などの勘定科目を使い、精算されるまで残高は残ります。個人事業の会計処理は、事業主勘定の残高が繰越されることはありません。なかなか理解しにくいですが、青色申告で55万円の控除を受けるためには事業主勘定の会計処理方法の理解は必要です。今は会計システムを使うことで仕訳を入力する機会は少なく自動的に処理されるようになっているので、55万円控除を受けるための貸借対照表の作成は比較的容易です。確定申告では青色申告特別控除の55万円控除に挑戦してみてください。

執筆者プロフィール:
名前:須栗 一浩
肩書:税理士法人エムエスオフィス 代表
紹介文:1995年に税理士登録し、これまで個人法人の関与先クライアントは500件をこえる。個人事業の開業から、法人設立、相続税まで含めたトータルのコンサルタント業務をおこなう。企業のICT化も推進し、クライアント企業への導入も進めている。

上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。

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