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いまさら聞けない「役員報酬」とは? 税制上のメリットを最大化するために押さえるべきポイント

  • 公開日:2021年12月16日

会社設立後、決定しなければならないのが「役員報酬」です。役員報酬を決定する際の注意点や手順、相場などの税務上のルールをしっかりと理解し決定していく必要があります。この記事では役員報酬について見ていきましょう。

役員報酬とは?

役員報酬とは役員に対して支給される報酬です。役員とは、法人の「取締役」「執行役」「会計参与」「監査役」「理事」「監事および清算人」などにあたる人物を指します。

なお、役員報酬は金銭により支払われるものだけではありません。以下のような、同等の経済的利益をもたらすものも役員報酬に含まれます。

  • 役員に無料で贈与された資産
  • 本来は有料であっても相場よりも極端に低い金額で役員に売り渡された資産
  • 役員に対する無利息での金銭の貸し付けや返済の免除
  • 役員の家賃の免除分や生命保険料の肩代わり分

出典:
国税庁|No.5200 役員の範囲
国税庁|No.5202 役員に対する経済的利益

役員報酬と給与の違い

会社が社員に支払うお金には、役員報酬のほかに、「従業員給与」もあります。役員報酬も従業員給与も、所得税の計算方法、年末調整の対象となる点は同じです。

ただし、役員報酬には従業員給与と違い、金額の決定時と変更時に以下のような税務上のルールが設けられています。

  • 原則として事業年度を通じて一定額にすること。
  • 事業年度開始日(期首)から3ヵ月以内に変更しなければならない。
  • 役員報酬を変更する場合、株主総会を開催し、変更についての株主総会議事録(合同会社の場合は同意書)を作成する。
  • 事業年度開始日(期首)から4ヵ月以上経過した後に変更した場合、変更した分の報酬は損金にできない。ただし、役員の地位や職務内容を変更した場合や、経営状況が著しく悪化し、第三者との関係にも影響を与える場合についてはこの限りではない。
  • 賞与を支払う場合は事前に支払う金額と時期を決定し「事前確定届出給与」という書類を税務署に提出する。

役員報酬を決定する際には役員報酬の税務上のルールを確認し、必要に応じて税務署に届出ることを忘れないようにしましょう。

役員報酬を決めるポイント

役員報酬は役員への仕事の対価です。たとえば、家族経営の会社では役員報酬を自らが決められます。極端にいうと、実際は仕事をしていなくても役員報酬の支給ができるのです。

そうした不当な額の支給を防ぐ意味で、法人税の計算上において、次の基準が設けられています。

  • 役員の職務内容
  • 会社の業績や従業員の給与支払状況
  • 同業種、同規模のほかの法人の役員報酬状況

この観点から役員報酬額として不当となったときは、法人税の全額を損金にできないためよく確認しておきましょう。

とはいえ、同業他社の役員報酬がいくらかは上場会社であればわかりますが、そうでない場合はわからないものです。そのため、3つの基準に関してすべて厳密に決定しなければ役員報酬の損金算入ができないわけではありません。

しかし、仕事の対価として状況に合った役員報酬額が望ましいので、従業員が同等の業務をおこなった場合の給与・報酬額を考慮して設定するとよいでしょう。

役員報酬の相場はどのくらい?

役員報酬の相場は、創業期だと売上が未知数ということもあり、月額20万~30万円程度が多いですが、すでに売上が見込めていればより高い役員報酬を設定すること会社もあります。

2期目以降は会社の業績次第といえます。月額100万円以上で設定する場合もあれば、役員報酬を抑えて会社にお金を残そうとする場合もあり、経営者の方針により異なります。

役員報酬の種類

会社が役員に支払うお金のうち役員報酬には、以下の3つの種類があります。

1つ目は、役員報酬を毎月同じ額に設定する「定期同額給与」です。2つ目は役員の賞与に関する「事前確定届出給与」、3つ目は業績に連動して報酬が発生する「業績連動給与」です。

定期同額給与

役員報酬を毎月同じ額に設定する給与のことです。ただし、永遠に同額のままというわけではなく1年ごとに変更できます。変更する場合、新しい事業年度が始まってから3ヵ月以内に決定しなければなりません。

事前確定届出給与

役員の賞与に関する給与のことです。法人税法上、役員賞与は原則損金算入できません。例外として、新しい事業年度の前に次期の賞与額を決めて同額を支給すれば損金算入できます。

業績連動給与

業績に連動して報酬が発生するようにできる制度です。ただし、基本的には、有価証券報告書を提出しているような「上場企業」に限られます。非上場企業は「定期同額給与」か「事前確定届出給与」のいずれかしか使えません。

役員賞与で社会保険料はどう変わるのか?

役員賞与の社会保険料には、健康保険が年度の累計で573万円、厚生年金保険が月間150万円の上限があり、上限を超える賞与額は社会保険料の対象外です。この役員賞与の上限を活用することで支払う保険料に差が出ます。

「役員報酬のみ」のパターンと「役員報酬+役員賞与」のパターンでその違いを比較してみましょう。

毎月65万円を支払うパターン(年収780万円)

役員報酬を毎月65万円、12ヵ月受取った場合には月々、
健康保険料は63,960円(介護保険被保険者でない)
厚生年金保険料は118,950円
源泉所得税額は24,500円(扶養親族の数は0人とする)
年間:(63,960円+118,950円+24,500円)×12=2,488,920円
となります。

毎月10万円 + 役員賞与660万円を支払うパターン(年収780万円)

役員報酬を毎月10万円、12ヵ月受取った場合には月々、
健康保険料:9,643円
厚生年金保険料:17,934円
源泉所得税額:0円
年間:(9,643円+17,934円)×12=330,924円
となります。

役員賞与の660万円は、健康保険・厚生年金保険ともに上限を超えますので、上限額に保険料率をかけて計算します。

健康保険料  :573万円×9.84%=563,832円
厚生年金保険料:150万円×18.3%=274,500円
源泉所得税額 :5,761,668円(社会保険料838,332円控除した額)×2.042%(扶養親族0人)=117,653円

健康保険・厚生年金保険の総額は年間1,169,256円、源泉所得税は117,653円、合計1,286,909円です。

(健康保険・厚生年金保険の総額)330,924円+563,832円+274,500円=1,169,256円

役員賞与の上限を活用することで、「役員報酬のみ」と比べ、「役員報酬+役員賞与」は健康保険・厚生年金保険と源泉所得税、あわせて1,202,011円削減できたことになります。

※ 役員報酬の保険料は下記を参照

出典:
全国健康保険協会|令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
国税庁|令和3年分 源泉徴収税額表

役員報酬額が大きい経営者であれば、税制上のメリットさらに大きくなります。

「借上げ社宅制度」「出張旅費規程」も活用できる

借上げ社宅制度は、社員だけではなく役員にも適用できます。役員の住む居住用住宅の家賃は自己負担で、会社が支払っても損金にはならないのが通常ですが、借上げ社宅制度を利用すると役員自身が負担する家賃は5割以下になります。会社としても家賃を経費にできます。
また、役員が家賃の一部しか負担しない場合、その額だけ役員報酬を下げられるため、社会保険料が変わります。

ほかにも、出張旅費規程を活用した日当の支払いも有効な方法でしょう。出張旅費による日当は社会保険の対象外となるほか、所得税や住民税もかかりません。法人が個人へ支払った際の消費税は控除対象になります。

まとめ

役員報酬は所得税や法人税がかかわってくる上、今後の会社経営にも大きく影響を与える重要な決断です。自社の顧問税理士と相談しながら、納得のいくような役員報酬を決定しましょう。

執筆者プロフィール:
戸越 裕介(税理士)
船橋生まれ、関西育ち、静岡在住。静岡にて税理士事務所、コンサルティング会社、投資会社などの複数の企業の代表を務める。「難しいことを、日本一わかりやすく」するために、日々研究中。全国の中小企業にITを活用して業務効率化をおこない、経営を進化させる。得意分野は、建設、不動産、太陽光など。節税、補助金、コストダウン、経理自動化など「今すぐ経営に効果が出る」サポートを実践している。オタク気質で、気になることはとことん没頭しすぎることが欠点。

上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。

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