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経営計画書はなぜ必要?目的から記載項目まで徹底解説
- 公開日:2021年12月16日

事業をおこなうには、経営計画書を作ったほうがよいと聞いたことがあるかもしれません。しかし、経営計画書とはどんなもので、何を書けばよいのか、分からないことも多いでしょう。ここでは、経営計画書の内容や目的、記載項目について説明します。起業時やビジネス拡大時など必要に応じて経営計画書を作成できるようにしましょう。
経営計画書とは?
会社を運営する上で必要なものとして経営計画書があります。経営計画書とは、長期的な会社の経営方針や長期ビジョンを決めたものです。経営計画書を作成することによって社内だけでなく、取引先や出資者などの社外関係者とも会社の方向性を共有できます。会社設立時に経営計画を立てたほうがよいだけでなく、会社の節目で都度振り返り経営計画を見直す必要があります。
事業計画書との違い
会社における計画というと、事業計画を思い浮かべる人もいるでしょう。経営計画書が会社全体の経営方針や長期的な戦略を記載するのに対し、事業計画書は事業を成功させるための具体的な戦略や財務計画のことをいいます。たとえば旅行に行く際に旅行の目的を考えたり、訪問先で何をするかを決めたりすることは経営計画で、目的地にたどり着くには、どのルートをたどって、どのような交通機関を使い、どの程度の費用をかけるかを決めるのが事業計画になります。
経営計画書を作成することによるメリット
経営計画書を作成することで生まれる、会社におけるメリットとしては、
- 社内外の関係者と、目標や方針の共有ができる
- 組織と事業の将来を見渡せる
- 資金調達がしやすくなる
などがあります。詳細をそれぞれ説明していきます。
社内外の関係者と、目標や方針の共有ができる
会社はさまざまな人が集まった組織です。それぞれの人がばらばらの目標で動いていては、効率的な経営はできませんし、スピード感をもって事業をおこなうこともできないでしょう。会社の目標や方針について経営計画書で示すことによって、全社員が目標や方針を共有することができます。また取引先や金融機関などに対しても、どのような方向に向かって会社経営をしているのかを示すことができます。
組織と事業の将来を見通せる
経営計画書を作成することで得られるメリットとして、将来の組織と事業を見通せることが挙げられます。具体性のある経営計画書を作成するためには、まずは理想とする組織や事業の在り方を考えなければなりません。つまり5年後、10年後に組織はどのようになっていなければいけないか、また事業規模はどのくらいになっているかなどを考えるのです。そして、その目標に向かって組織や事業をどのように変化させなければいけないのかの見通しをもつことができるのです。
資金調達がしやすくなる
経営計画書は、社内だけでなく、社外とも目標や方針が共有できるメリットがあると書きましたが、実現性のある経営計画書を作成できれば、金融機関や新たな出資者にもアピールできます。つまり経営計画書の内容が実現性の高いものであれば、借入や出資などを依頼する場合にも、金融機関の審査や出資者の稟議が通りやすくなり、資金調達がしやすくなるのです。
経営計画書の種類
一口に経営計画書といっても、いくつかの種類があります。主なものとして、中期経営計画書、経営革新計画書、経営改善計画書などがあります。
中期経営計画書
中期経営計画書は、主に3年から5年のタイムスパンで考えられるもので、最も一般的なものといえます。会社の創業時以外にも、新規事業の開始時や事業転換を図るときなどに作成します。会社の現状分析と将来の方向性、あるべき姿などを記載します。上場企業でも会社のIRで5年程度の中期経営計画を発表する場面が多いです。このように中期経営計画は社内だけでなく、株主など外部のステークホルダーに向けたメッセージとして使われることがあります。
経営革新計画書
経営革新計画書とは、国や都道府県から支援を受ける際に作成するもので、中小企業が既存事業とは違った新規事業に取組み、計画期間に目標とする経営指標を達成するという計画を示すものです。経営目標の実現の可能性が高いと判断されれば、国や都道府県から助成金などの支援が受けられます。ただし計画書は作成だけすればよいものではなく、その後のフォローアップできちんと成果が出せなければ、支援などが打ち切られることもありますので、数値目標などは確実に達成できるものが求められます。
経営改善計画書
経営改善計画書は、主に金融機関に提出するものです。経営環境の悪化などで借入金の返済が難しいときなどに作成します。コアビジネスへ集中して経営を効率化したり、人員の削減で固定費を削減したりするといった方策を提示します。実現性のある形で作成しなければ融資が打ち切られることもあるので、慎重な対応が必要です。
経営計画書の記載する項目
経営計画書には決まった書き方はありませんが、必須な項目としては、会社概要、経営理念、経営基本方針、事業計画、人員計画などがあります。
会社概要
会社概要は、会社の基本情報になります。
主な記載内容は、
- 商号
- 本店所在地
- 代表取締役名
- 設立年月日
- 事業内容
- 資本金
- 従業員数
- 主な取引先
- 取引銀行
- 会社沿革
などです。
資本金、主な取引先、取引銀行などは、新規の取引先や金融機関などがチェックするポイントになります。正確に記載するようにしましょう。
経営理念、ビジョン・ミッション
経営理念は、会社経営に対する経営者の哲学や思いです。経営理念は短い言葉であったり、箇条書きで表されたりします。経営理念の中にはビジョン(目標)、ミッション(使命)、バリュー(信念)、スローガン(合言葉)なども含まれます。
経営基本方針
経営基本方針とは、経営理念に沿って会社をいかに運営するかといった基本的な考え方や方向性を示すものです。したがって、経営基本方針は経営理念なしでは作れないものです。経営基本方針には、会社、事業、顧客、社員、社会への貢献などそれぞれのあり方、捉え方などを記載していきます。
長期・中期・短期事業計画
会社の経営基本方針に沿って、具体的に何をしていくのかを記載するのが事業計画です。一般的には経営計画と同様に長期が5年から10年、中期が3年から5年、短期が1年から3年の計画を示します。短期では、期間が短いので、売上や利益などを具体的に、実現性の高い数値で示すことが求められます。中期や長期になると予期しない外部環境の変化(災害など)も発生しますので、その際には期間の途中でも見直す必要があります。
資金計画
事業が拡大すると、より多くの資金が必要となります。また売掛金などの資金の回収が長引くと手元の資金が足りなくなる資金ショートなどにより黒字倒産になることもあります。事業の拡大とともに借入枠を大きくする計画が必要です。また、大きな投資が必要な際には、長期借入金を選択するのか、株式の発行を選択するかなどを記載します。
人員計画
人員計画は、事業計画にあわせて、どのような組織体制にして、どのような人材を配置すべきかを策定するものです。人員計画には人材配置、人材採用計画、異動計画、能力開発計画などがあります。会社の成長に伴い、人数を増やすだけでなく、スキルをもった人材の補強などをおこなう必要があり、中・長期の人員計画は重要な意味があります。
経営計画書作成でよくある質問
以下では経営計画書の作成に関して、よくある質問をQ&A方式で解説します。
フォーマットや雛形はあるのか?
経営計画書に関して、決められたフォーマットや雛形というものはありません。ただしその経営計画書をどのように使うかで、ポイントは絞られてきます。たとえば助成金を申請する場合に使う経営革新計画書であれば、必要な項目がある程度決められていますので、ガイドラインに沿って必要項目を入れることになります。したがって、フォーマットよりは、いかに目的に合った経営計画書を作るかですので、必要な項目をよく吟味して経営計画書を作成しましょう。
どこまで具体的な数字を記載すればいいのか?
経営計画書が絵空事にならないためには、目標とする数値などが具体的でなければなりません。しかしそれは、1円単位までの正確さを要求するものではなく、数値の実現の可能性を示せればよいのです。例えば5年後に売上を2倍にするという目標を掲げたとしたら、なんの根拠もなく2倍と掲げるよりも、それがどのような要因(市場の拡大、他社製品の代替性など)で可能なのかを、客観的な資料や説明で裏付ければ、具体性が増す経営計画書になります。
まとめ
経営計画書は、会社を経営する際には必須のアイテムです。経営計画書に目標を記すことで、社内の人間の目標意識、連帯感を高めるとともに、社外の金融機関や出資者に対して、経営の方向性を理解してもらうことにより、借入金や助成金、出資などを得ることもできます。最初は難しく感じるでしょうが、経営計画書の作成は一度では終わらないので、会社の理想の姿を思い浮かべて、理想に近づける方策を考えていけば、徐々に洗練された経営計画書になるでしょう。
執筆者プロフィール:
青野 泰弘(ファイナンシャルプランナー・行政書士)
青野行政書士事務所 代表。大学卒業後、数社の証券会社で債券の引受けやデリバティブ商品の組成などに従事。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。お金の悩みはたくさんあるが、身近な人には相談しにくいもの。また金融の話には難しい言葉があり、敬遠する人も多いかもしれない。金融を分かりやすい言葉で多くの人に理解してもらえるように説明している。
上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。