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エステサロンの開業にかかる資金を解説│開業までのステップは?
- 公開日:2023年4月28日
エステサロンは形態にもよりますが、できる限り初期費用を抑えて開業したいかたにとって人気のビジネスです。しかし、開業しやすいからこそ、継続していくことが難しいビジネスでもあります。エステサロンについて開業のために踏むべきステップをしっかり理解して、お店を継続していけるように準備を行いましょう。
エステサロンの開業に必要な資金
どのような業種にも言えますが、エステサロンについても、開業にあたっては設備資金と運転資金が必要になります。この設備資金と運転資金を合わせて開業資金といいます。
設備資金
設備資金とは開業にあたって一時的に必要になる資金です。エステサロンの開業に必要な設備資金として、主に以下が挙げられます。
- お店の内装工事費用
- 美容機器の購入費用
- お店の契約金(敷金や礼金、仲介手数料、前払賃料など)
いくら設備資金がかかるかは、貯めるべき自己資金や借入が必要な金額(融資額)に影響しますので、もれなくしっかりと計算しなければいけません。
エステサロンと一口に言っても、その業態はさまざまです。ワンルームの部屋で開業する場合には内装工事や不動産の契約金はそれほどかからないかもしれませんし、店舗を借りて営業するといった場合には内装工事や契約金もそれなりの金額がかかります。
まずはどのような業態で開業するのかを決めたうえで、設備資金がどのくらいかかるのかを把握しましょう。
運転資金
運転資金とは、お店を毎月運営していくために必要となる資金です。運転資金として、主に以下が挙げられます。
- 毎月の支払家賃
- 従業員への給料
- 広告宣伝サイトへの掲載費用
- 水道光熱費
- ジェルなどの消耗品の仕入費用
開業時には経営が安定するまでの資金として3~6カ月分の運転資金を準備しておくとよいでしょう。
エステサロンを開業するまでのステップ
物件探し
エステサロンをオープンする際には、まずは物件探しが必要です。エステサロンをオープンする場所が決まらなければ、開業したくてもお店を開業することができません。
エステサロンについては、どのようなコンセプトのお店を開くのかということを明確にしたうえで、物件探しをする必要があります。マンションの一室などで行うプライベートサロンもあれば、従業員を雇用して店舗を構えて経営するサロンもあります。前者のプライベートサロンであれば、サロンの運営も可能な物件を探す必要がありますし、後者の店舗系サロンであればお店のコンセプトにあった物件を探す必要があります。
特に店舗系のサロンでは、物件を選択する際には、毎月の家賃だけではなく、さまざまな観点を考えていく必要があります。いくら家賃が安くてもそもそもターゲットにしている顧客層があまりいないエリアで開業した場合、お客さまが来ない可能性があります。
物件選びにあたっては、まずは開業エリアを決めたうえで、そのエリア内で物件を探す必要があります。
エリアを決めたら商圏分析も行う必要があります。商圏分析とは、出店希望のエリアの特徴をさまざまなデータをもとに読み取ることです。リピーター獲得にはあまり関係ないことかもしれませんが、新規顧客獲得のためには外せない分析です。
商圏分析を行う際に検討すべきポイントは3つあります。
- 情報でみる商圏分析
出店エリアにどのような年齢層の人が居住しているのかなどといった情報について国政調査などをもとに分析します。 - 人の動き(導線)でみる商圏分析
物件がターゲットとする顧客にとって通いやすい場所かということも重要です。メインストリートから1本外れるだけで、人通りが大きく変わります。出店したい物件が人通りのない道だと、特にリアル集客に大きく影響を及ぼします。 - 物件でみる商圏分析
検討している物件そのものについて調べます。階数や同じ物件に入っているその他のテナントや、外からの見えやすさなどを確認します。また、エステサロンに関しては、外から店舗の雰囲気がうかがえるということも集客において重要なポイントです。サロンのコンセプトにもよりますが、お客さまにとって安心できるような店舗設計が重要になります。
プライベートサロンの場合は、特にマンションの一室など場所が分かりにくくなることもあるため、駅からの距離や案内のしやすさなどが物件選びにおける重要なポイントです。
また物件を選ぶうえで重要になってくるのが審査です。どれほど理想的な物件を見つけたとしても、借りるには審査があります。商業用の物件については、初期費用や月額の家賃が高いため、審査についても居住用の物件より厳しく見られますし、入居したい物件は、ほかの事業者も同様に狙っている可能性があります。理想的な物件が見つかったら、すぐに申込を行いましょう。物件を仮押さえしたら、次に資金調達のステップを迅速に進める必要があります。物件を仮押さえしておける期間には限界があるので、その間に資金のめどをつけなければいけません。
資金調達
開業のための資金を調達する方法として、主に自己資金で賄う、融資を受ける、補助金を受給するといった方法があります。
自己資金はその名の通り自分で貯めたお金を指します。
融資とは金融機関からお金を借りることをいいます。中でもエステサロン開業にあたってよく利用されるポピュラーな制度は日本政策金融公庫の新創業融資制度です。新創業融資制度を利用するメリットは、主に以下3点です。
- 原則として無担保・無保証人の融資制度である
- 信用保証協会の保証が不要なため、信用保証料がかからない
- 営業許可の取得前であっても融資が受けられる可能性がある
このほかに、事業を開始するにあたって、国や自治体から補助金を受けられる場合があります。しかし、補助金はあくまで使ったお金の一部補助です。原則として、先にお金がもらえるわけではないので、開業資金として補助金を利用することはできません。開業資金は、自己資金と借入金融資の組合せで調達するということを意識しておきましょう。
特に店舗系のサロンでは、物件契約にあたって家賃のほかに、保証金や礼金の支払いなどでまとまった資金が必要となりますし、融資での資金調達を検討している場合、審査が通ってからでないと物件の本契約ができず、物件が流れてしまうこともあります。もし一人で対応するのが難しいと感じたら、専門家に相談することも検討しましょう。
開業届の提出
エステサロン開業の方法は、個人事業主と会社設立の2パターンがあります。店舗系のエステサロンであれば、会社設立して開業することもありますが、プライベートサロンでは、個人事業主での開業がほとんどです。ここでは、個人事業主で開業した場合に必要な届出を説明します。
個人事業主で開業した場合、まずは住所地(または店舗の所在地)を管轄する税務署に「個人事業の開業届出書(いわゆる開業届)を提出します。この時に、併せて「所得税の青色申告承認申請書」も提出することをおすすめします。青色申告の承認を受けることで、さまざまな所得税計算上の優遇措置を受けられるようになります。
このほかに、従業員を雇用する場合には、労働保険(労災保険や雇用保険)の手続きが必要になります。エステサロンでは、スタッフを出来高制などの業務委託の形で仕事をしてもらうことがあります。その場合には、労災保険や雇用保険の手続きは必要ありません。
設備・備品の購入
サロン経営には、内装工事以外にも設備や備品の購入が必要です。多くのサロンで必要になる施術用ベッドのほかに、施術用の備品も用意しておく必要があります。ただし、備品については保管スペースも必要となり、どのくらいのペースで消費するかということも、開業当初は読めません。備品については、まずは必要最小限の分量で仕入れておくとよいでしょう。
集客施策
サロン経営では、新規顧客の獲得とリピーターの獲得の両方を考えていく必要があります。
特に新規顧客の獲得のためには、WEB集客が欠かせません。コストはかかりますが、予約サイトへの掲載なども積極的に行っていくとよいでしょう。WEB集客からの口コミといった流れが、新規顧客獲得のための一つの戦略です。
また、せっかく来てくれたお客さまの来店を一回きりにしないための施策も重要です。新規顧客をどれだけリピーターにできるかが、エステサロン経営を左右するといっても過言ではありません。施術でお客さまを満足させられるということが大前提ですが、それ以外のお客さまとのコミュニケーションや、次回以降の施術に向けたアドバイスなどを通して、継続率を高めるようにする施策にも力を入れなければいけません。脱毛サロンのようにサービス内容によっては、いずれにしても繰返しの来店が必要なケースもありますが、そうでなくても継続的な来店を促すための施策が必要です。
エステサロンの開業は自宅とテナントどちらがいい?
エステサロンの開業には、店舗を借りるほかに自宅での開業も可能です。双方のメリットについて確認しましょう。
自宅サロンのメリット
自宅開業のメリットは何といっても家賃がかからないことです。また、自宅なので思うような店舗設計もできるでしょう。通勤のための時間がかからないこともメリットの1つです。
ただし、もし居住用で賃貸している物件であれば、勝手にエステサロンに転用することは賃貸借契約に違反してしまいます。そのため、居住用ではなくテナントを借りなければなりません。自宅をサロンにするには、基本的には持ち家であることが必要と考えておいたほうが良いでしょう。
テナントのメリット
テナントのメリットは、お客さまの信頼度が高いということがあります。また、立地についても自宅の場所に縛られることなく選択できるため、集客面でも自宅サロンに比べて有利であると言えます。
お店のコンセプトによっては、大きな物件を借りなくても、エステサロンとして利用可能なワンルームを借りることもできます。
いずれにしても、自宅サロンに比べて物件契約はコストがかかります。しかし、サロン経営を続けていくのであれば、自宅サロンよりも物件を借りたほうが集客面などで有利であり、結果的に利益が出たということもあります。
もし最初からテナントを借りることが不安なら、自宅でテスト営業をしてからテナントを借りることも1つの手です。
エステサロンを開業する際のポイント
エステサロンは大小含めて多くの競合が存在します。その中で自店舗を際立たせてお客さまを獲得していくには、さまざまな施策が必要です。ここではエステサロンを開業するためのポイントを3つ挙げてみます。
お店の強みを明確にする。
一口にエステサロンといっても、その種類はさまざまです。マッサージサロンもあれば脱毛サロンもあります。まずは自分がどのようなお店を開きたいのかを明確にしましょう。
そのうえで、そのコンセプトがお客さまにとって魅力的であるかを考える必要があります。多くのエステサロンが存在している今、新たに開業するには何かしら際立った特徴がないと、お客さまを獲得していくことは難しいでしょう。
お店の特徴には施術そのものが特殊であることと、施術以外のサービスやお店のコンセプトが際立っていることがあります。どちらのパターンにしても、競合分析や自らの強みの分析を通して、起業家自らが考えていかなければいけません。
お店の収支を管理する
いざエステサロンをオープンしたら、どんぶり勘定にならずにしっかりとお店の収支を管理していくことが重要です。お店を経営していくとなると毎月かかるコストや借入金の返済、自らの生活費などを勘案して目標売上高を設定していく必要があります。そして、設定した目標売上高をどのように達成していくのかも考えていく必要があります。
売上高は、客単価と来客数の掛け算です。高級志向、特に自宅開業やワンルーム開業のお店であれば客単価重視での目標設定となるでしょうし、回転数を重視するなら来客数を重視した目標設定になるでしょう。
許認可に注意する
例えば脱毛サロンであれば、レーザー脱毛やニードル脱毛などは医療脱毛に該当するため、免許が必要となります。また、マッサージがいわゆる「もみほぐし」であれば特殊な資格は不要ですが、治療行為として行うのであれば「あん摩マッサージ指圧師」の資格が必要です。
このように、エステサロンは、サービス内容によって特殊な資格が必要になることもあります。ホームページなどへの記載内容を含めて、免許が必要になるサービスではないかしっかりと確認しておく必要があります。
まとめ
エステサロンは開業の方法によってはそれほど資金をかけずに開業できる反面、競合が多く生き残りが難しい業種でもあります。それだけに開業する前の準備が開業後の成功に結び付きます。開業準備をしっかりと行い、スムーズなスタートを切れるように準備しましょう。
執筆者プロフィール:
渋田 貴正
税理士・司法書士・社会保険労務士
司法書士事務所V-Spirits代表、税理士法人V-Spirits社員税理士。
税理士法人V-Spiritsでは、開業時の融資サポートや事業計画の策定支援、会社設立支援、開業後の税務顧問など起業家のためのワンストップサービスを行っている。
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上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。