法人のお客さま 経営TIPS
日本政策金融公庫の役割とメリットとは:中小企業支援の要となる金融機関について解説
- 公開日:2025年3月 7日

日本経済を支える中小企業の資金調達において、日本政策金融公庫は重要な役割を果たしています。経営者の皆さまの中には、事業拡大や新規事業立ち上げの際に資金面で不安を感じるかたも多いのではないでしょうか。そこで、この記事では、日本政策金融公庫の特徴と役割について詳しく解説します。日本政策金融公庫の仕組みを理解することで、より効果的な資金調達の方法が見えてくるでしょう。
目次
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主のかたにとって重要な役割を果たす政府系金融機関です。この機関の最大の特徴は、中小企業や小規模事業者、個人事業主向け融資を積極的に行う点です。国が100%出資しているため、国の政策目的である「中小企業や小規模企業、農林水産業などの成長、安定や地域経済の活性化、金融安定などを支える金融支援を行うこと」を目的としています。そのため、一般的な民間銀行では融資が難しいケースでも、日本政策金融公庫は積極的に対応する姿勢を見せています。これにより、新規事業の立上げや中小企業の成長を後押しする重要な役割を担っています。また、日本政策金融公庫の資金源は、一般の銀行とは大きく異なります。預金業務を行わず、財政投融資や国の一般会計などの公的資金を原資としています。
このような特徴を持つ日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主の経営者にとって、事業展開や経営改善の味方となっています。民間金融機関では対応が難しい分野にも積極的に融資を行うことで、日本経済の基盤を支える重要な役割を果たしているのです。
日本政策金融公庫の役割
中小企業や小規模事業者、個人事業主を支援する重要な役割を担う日本政策金融公庫の主な役割は、緊急時のセーフティネット機能の発揮や経済成長の促進、そして地域活性化など多岐にわたります。これから、日本政策金融公庫の具体的な役割について詳しく解説します。
セーフティネット機能の発揮
日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主を支援する重要な役割を担っていますが、その中でも「セーフティネット機能」は大きな役割の1つです。自然災害や経済環境の急激な変化など、予期せぬ事態に直面した際、多くの事業者が資金繰りに苦慮します。このような状況下で、日本政策金融公庫は機動的かつ柔軟な対応を行い、事業継続を支援しています。
例えば、大規模な地震や台風などの自然災の発生や新型コロナの蔓延時には、事業者向けに特別融資制度の設置や返済条件の緩和などに対応しています。これにより、被害を受けた事業者が速やかに事業を再開できるよう後押ししています。
<新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン) 融資実績(令和5年3月末時点)>

日本経済成長・発展への貢献
日本政策金融公庫は、新規事業の創出支援から事業再生、事業承継まで、幅広いニーズに対応し、中小企業の成長を後押ししています。さらに、海外展開を目指す企業への支援や、農林水産業の新たな展開を促進する取組みも行っています。
<日本政策金融公庫令和4年度の融資実績>
- 創業・スタートアップ・新事業分野:1,304億円
- 事業再生関連分野:401億円
- 事業承継関連分野:842億円
- 海外展開分野:421億円
また、従来の金融機関では対応が難しい分野にも及び、イノベーションの促進や新産業の創出に貢献しています。加えて、景気後退期には、中小企業向けの資金供給を拡大し、雇用の維持と経済の下支えの一助を担っています。
(出典:日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/recruit/business/business02.html#b02)
地域活性化への貢献
日本政策金融公庫は、地域経済の活性化に重要な役割を果たしています。日本政策金融公庫は、地方版 総合戦略などへの積極的な参画に加え、全国に展開する支店ネットワークを活用したマッチング、商談会、セミナーなどの開催などを通じて、地域活性化への貢献に取り組んでいます。日本政策金融公庫は単なる融資機関にとどまらず、地域の持続的な発展と活性化を支えるパートナーとしての役割を果たしています。
日本政策金融公庫の事業
日本政策金融公庫は、2008年に設立された政策金融機関です。その誕生は、それまで個別に活動していた3つの公庫(国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、そして農林漁業金融公庫)が1つになり、より効率的で包括的な金融支援体制が整えられました。
現在の日本政策金融公庫は、統合前の各公庫の機能を引継ぎ、3つの主要な事業部門、国民生活事業、中小企業事業、そして農林水産事業を運営しています。これらの事業部門は、それぞれ特定の分野に焦点を当てながら、日本の経済と社会の発展を支える重要な役割を果たしています。ここでは、それぞれの事業について詳しく説明します。
国民生活事業
日本政策金融公庫の国民生活事業では、個人事業主や小規模企業へ融資や経営支援、一般家庭へ教育ローンを提供しています。
日本政策金融公庫の国民生活事業の融資は、約9割が従業者9人以下の小規模事業者に利用されています。食料品店、工務店など地域に密着した企業からベンチャー企業など新事業のパイオニアとなり得る企業まで、多種多様な小規模事業者のかたが利用しています。また、日本政策金融公庫の国民生活事業の融資の特徴は、平均融資残高877万円と小口融資が主体であり、さらに約9割が無担保融資という担保に依存しない融資を推進していることです。

融資に加えて、全国各地に「創業支援センター」や「ビジネスサポートプラザ」を設置し、幅広い創業・スタートアップ支援サービスを行っています。さらに、一般家庭の支援として「国の教育ローン」を提供しています。入学時、在学時に必要な資金をお使いみちとした「国の教育ローン」は、教育費負担の大きい大学生や専門学校生のいるご家庭を中心に利用されています。
(参考:日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/recruit/business/business03.html)
中小企業事業
日本政策金融の中小企業事業では、中小企業の成長と発展を支援するため、中小企業に向けた融資や経営支援を行っています。
融資先は約79%が従業員20人以上、約91%が資本金1,000万円以上であり、国民生活事業より規模の大きな中小企業に対して支援を行っています。日本政策金融の中小企業事業の融資の特徴は、融資の過半が期間5年超と長期的で、すべて返済計画の立てやすい固定金利の融資を行っていることです。さらに、日本政策金融の中小企業事業では、全国に広がるお取引先と店舗網を活かしたネットワークによるマッチングなどの経営支援サービスも提供しています。

(参考:日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/recruit/business/business05.html)
農林水産事業
日本政策金融の農林水産事業は、日本の食料安全保障と農林水産業の持続的発展を支えるため、農林水産業に従事する事業者や、国産農林水産物の加工・流通に関わる企業に対して、長期的な視点に立った資金融資を行っています。
日本政策金融の農林水産事業の融資の特徴は、農林水産業と食品業界のそれぞれに合った融資を展開していることです。特に、農林漁業者は「天候などの影響を受けやすく、収益が不安定」「投資回収に長時間を要する」といった特性があるため、その特性に合わせた融資を通して、農林水産業の担い手を育て支えています。また、自然災害や家畜伝染病、農産物の価格下落などによる一時的な経営悪化時に機動的にサポートするセーフティネット機能を持つことも日本政策金融の農林水産事業の大きな特徴です。
さらに、日本政策金融の農林水産事業では、国産農水産物の展示商談会「アグリフードEXPO」を開催し、融資先の販路や取引の拡大をサポートするなどの経営支援サービスも提供しています。
このように、日本政策金融公庫は3つの事業を展開することで、日本の経済構造の中核を成す中小企業や個人事業主、そして一次産業を幅広くサポートしています。政策金融機関としての特性を活かし、民間金融機関では対応が難しい分野にも積極的に取組み、日本経済の安定と成長を下支えする役割を担っているのです。
日本政策金融公庫を利用するメリット
日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者にとって非常に重要な金融機関です。実際に、日本政策金融公庫の利用にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、日本政策金融の主なメリットについて、3つ説明します。
1. 創業前や創業初期でも申込みしやすい
日本政策金融公庫の特徴として、事業実績がない創業前や事業実績の少ない創業初期でも融資を受けられることが挙げられます。日本政策金融公庫の融資は、営利目的ではなく、国の政策目的である「中小企業や小規模企業、農林水産業などの成長、安定や地域経済の活性化、金融安定などを支える金融支援を行うこと」を目的としているため、比較的支援に積極的な傾向があります。そのため、創業前後や審査に不安がある企業でも申込みしやすい金融機関となっています。
2. 返済期間が長め
日本政策金融公庫は、ほかの金融機関と比較して返済期間が長く設定可能です。日本政策金融公庫の返済期間は、融資制度によって異なりますが、7~20年と長く設定されているため、経営が安定するまで返済の余裕を持つことが可能です。一方で、返済期間が長くなると、利息分の支払いが多くなるため返済総額が増加する点には注意が必要です。
3. 無担保・無保証の融資制度がある
日本政策金融公庫には、無担保・無保証人でも融資を受けられる融資制度があることもメリットの1つです。特に、新規開業資金をはじめとした創業融資を通じて、幅広い方の創業・スタートアップを重点的に支援しているため、新たに事業を始めるかたや事業開始後税務申告を2期終えていないかたは、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用することができます。
これらのメリットにより、日本政策金融公庫は中小企業や小規模事業者の成長と発展を強力にサポートする重要な役割を果たしています。
(参考:日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index_k.html)
日本政策金融公庫を利用する場合の注意点
日本政策金融公庫は中小企業支援において重要な役割を果たしていますが、いくつかの注意点があることも事実です。ここでは、日本政策金融公庫の注意点について説明していきます。
1. 繰上返済ができない融資がある
日本政策金融公庫の融資では、原則として繰上返済ができない融資があります。一般的な銀行融資では、融資を受けた後に資金に余裕ができた場合、繰上返済して金利支払い分を減らすことができます。しかし、日本政策金融公庫の繰上返済が認められない融資の場合、当初の計画通りに返済を続けなければならず、資金の有効活用の観点からは課題となる可能性があります。また、繰上返済が可能な日本政策金融公庫の融資においても、一括払いにする際には「期限前弁済手数料制度」に定められた手数料を支払う必要があります。
(参考:日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/5years.html)
2. 支店数が少ない
日本政策金融公庫は全国に152支店がありますが、県内に数店舗しかない都道府県もあり、近くに店舗がない可能性があります。現在では、日本政策金融公庫(国民生活事業)への申込は、インターネットで完結できるため、支店数が少ないことは大きなデメリットではなくなっているものの、直接担当者と会って相談がしたい場合などには不便となります。
(参考:日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/service/apply.html)
これらのデメリットは、やむを得ない面もありますが、利用を検討する際には十分に考慮する必要があります。
オンラインでの申込み手続きが可能!住信SBIネット銀行でも日本政策金融公庫の口座振替で融資金の返済ができます

住信SBIネット銀行では、日本政策金融公庫(国民生活事業、中小企業事業)の事業資金融を口座振替で返済することが可能です。WEBサイトでのお手続きにより、書類に記入する手間がかからないため、手続きがスムーズに行えます。
まとめ
日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主、農林水産業者などを支援する重要な役割を担う政府系金融機関です。その特徴として、セーフティネット機能の発揮や日本経済の成長・発展への貢献、地域活性化への取組みが挙げられます。政策金融公庫の利用には、多くのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。そのため、自社の規模や資金繰りの計画を十分に考慮し、日本政策金融公庫からの借入を検討しましょう。