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復興特別所得税とは?経営者が知っておくべき基礎知識と実務上の注意点
- 公開日:2025年6月 3日

2011年12月2日、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために、「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」が創設されました。「復興特別所得税」を財源とする復興に向けた取組は、今なお続いています。
この記事では、復興特別所得税の基本的な仕組みから、経営者が押さえておくべきポイントまでを分かりやすく解説します。
目次
復興特別所得税の概要と目的
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するために2011年12月に導入された臨時的な税金制度です。この税金の主な目的は、被災地域の復興支援と、日本全体の経済再生を促進することにあります。
課税対象と適用期間
復興特別所得税は、所得税と同様に広範囲の所得を課税対象としています。具体的には、給与所得、事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、譲渡所得などが含まれます。法人税や相続税には適用されず、あくまで個人の所得に対して課税される点が特徴です。適用期間は2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間と定められています。この長期にわたる期間設定は、東日本大震災からの復興に必要な財源を安定的に確保するためです。
適用期間が長期にわたることから、経営者は経営計画を立てる際にも、この税金の存在を織り込んでおくことが重要です。長期的な利益予測や給与体系の設計においては、特に復興特別所得税について考慮する必要があります。また、従業員に対しても適切な説明を行い、給与明細書などでの明確な表示を心がけることが、透明性の高い経営につながるでしょう。
(参考:国税庁
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/fukko_tokubetsu/index.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/fukko/pdf/01.pdf)
復興特別所得税の税率と計算方法
復興特別所得税の税率は、所得税額の2.1%と定められています。この税率は、東日本大震災からの復興財源を確保するために設定されました。計算方法は比較的シンプルで、まず通常の所得税額を算出し、その金額に2.1%を乗じることで復興特別所得税額が求められます。
復興特別所得税額 = 所得税額 × 2.1%
~年間給与収入が500万円の会社員Aさんの場合~
①まず、所得税額を計算します。給与所得控除や基礎控除などを適用後の課税所得を300万円と仮定すると、所得税額は約27万円となります。
②次に、復興特別所得税を計算します。所得税額27万円に対して2.1%を乗じるので、復興特別所得税額は5,670円となります。
したがって、Aさんが納付する税額は、①所得税27万円と②復興特別所得税5,670円の合計275,670円となります。
~事業所得がある個人事業主Bさんの場合~
①まず、所得税額を計算します。事業所得が800万円の場合、所得税額は約120万円になります。
②次に、復興特別所得税を計算します。復興特別所得税は120万円の2.1%である25,200円となります。
したがって、Bさんの納付税額は所得税と復興特別所得税の合計の1,225,200円となります。
上記の例から、復興特別所得税は所得税額に比例して増加し、高所得者ほど負担が大きくなります。
注意点は、復興特別所得税が所得そのものではなく、所得税額に対して課税される点です。そのため、所得税の計算で適用される各種控除や税額控除は、復興特別所得税の計算には直接影響しません。また、復興特別所得税は所得税と一体で徴収されるため、給与所得者の場合は通常の源泉徴収の中に含まれています。事業所得者や不動産所得者など、確定申告が必要な場合も、所得税と一緒に申告・納付することになります。
所得税との関係性
復興特別所得税は所得税と密接に関連しており、実質的に所得税の付加税として機能しています。
重要な点は、復興特別所得税が所得税とは別個の税金ではなく、所得税の計算に連動して算出されるということです。そのため、所得税の課税対象となる所得に対しては、必然的に復興特別所得税も課されることになります。所得税の確定申告を行う際には、復興特別所得税も同時に申告・納付する必要があります。源泉徴収の場合も同様で、給与や報酬から所得税を徴収する際に、復興特別所得税も合わせて徴収されます。
経営者にとっては、所得税の計算や申告の際に復興特別所得税を忘れずに考慮することが重要です。特に、年末調整や確定申告の際には、所得税と復興特別所得税を合算した金額で処理を行うことになります。また、所得税の控除や特例が適用される場合、それに連動して復興特別所得税にも影響が及ぶことを理解しておく必要があります。例えば、所得税の軽減措置が適用されれば、結果として復興特別所得税の負担も軽減されることになります。
このように、復興特別所得税は所得税と不可分の関係にあり、経営者は両者を一体のものとして捉え、適切な税務処理を行うことが求められます。
経営者が注意すべき復興特別所得税の実務ポイント
給与計算への影響と対応策
復興特別所得税は給与計算に直接的な影響を与えるため、経営者は適切な対応策を講じる必要があります。具体的には、給与計算ツールの更新や、源泉徴収税額表の正確な適用が重要です。復興特別所得税は所得税額の2.1%であり、この追加負担を従業員の給与から正確に徴収し、納付する必要があります。
給与計算システムを最新の税制に対応させることで、復興特別所得税を含めた正確な源泉徴収が可能になります。また、給与明細書には復興特別所得税の項目を明確に記載し、従業員に対して透明性を確保することが望ましいでしょう。復興特別所得税は2037年まで継続される予定であるため、長期的な視点で給与計算システムや業務フローを整備する必要があります。
確定申告時の留意事項
確定申告時、所得税の申告書には復興特別所得税の計算欄が設けられており、所得税額の2.1%を別途計算して記入する必要があります。この際、端数処理には特に注意が必要で、1円未満の端数は切り捨てることが定められています。また、所得税の各種控除を適用した後の税額に対して復興特別所得税が課されるため、控除漏れがないか十分に確認することが重要です。特に、住宅ローン控除や医療費控除など、年によって変動する可能性のある控除項目については、慎重に確認する必要があります。
経営者のかたは、自身の確定申告だけでなく、従業員の源泉徴収票作成時にも復興特別所得税を考慮する必要があります。源泉徴収票の「所得税及び復興特別所得税の額」欄には、両税を合算した金額を記入することになるため、正確な計算と記載が求められます。電子申告(e-Tax)を利用する場合、復興特別所得税の計算は自動で行われますが、入力した基礎データの正確性が重要となります。特に、前年からの繰越損失がある場合や、複数の所得がある場合には、データ入力時に細心の注意を払う必要があります。
(参考:令和6年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引きhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/pdf/001.pdf)
復興特別所得税の還付について
復興特別所得税の還付は、通常の所得税の還付と同様のプロセスで行われます。確定申告時に過払いが判明した場合、所得税と合わせて還付されることになります。還付の主な対象となるのは、年末調整で過大に徴収された場合や、確定申告で各種控除を適用した結果納めすぎた税金が発生した場合です。特に、医療費控除や住宅ローン控除などの適用により、還付額が増加する可能性があります。
還付手続きは通常、確定申告書の提出によって自動的に行われますが、申告書の記入ミスや計算ミスには十分注意が必要です。特に、復興特別所得税は所得税額の2.1%という小さな割合であるため、見落としやすい点に留意しましょう。
海外居住者の復興特別所得税の取り扱い
海外居住者の復興特別所得税の取り扱いについては、国内居住者とは異なる点があります。
まず、海外居住者であっても、日本国内で得た所得に対しては原則として復興特別所得税が課税されます。ただし、租税条約によって課税が制限される場合もあるため、取引先の国との租税条約の内容を確認することが重要です。
特に注意が必要なのは、国内源泉所得に対する源泉徴収の際の取り扱いです。海外居住者への支払いに対しても、所得税と併せて復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。例えば、日本国内の不動産所得や配当所得、使用料所得などが該当します。また、海外居住者が日本で確定申告を行う場合、復興特別所得税も含めて申告する必要があります。この際、二重課税を防ぐため、外国税額控除の適用を検討することも重要です。
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※本記事に記載した内容は、2025年4月時点の情報です。最新の情報については、国税庁のWEBサイトなどをご確認ください。